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ProductZine Dayの第4回。オフラインとしては2回目の開催です。

ProductZine Day 2025

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経営に進むプロダクトマネージャーが持つべき3つの視点──視座・スケール・ファイナンス

2.「落とし穴」を回避するためにプロダクトマネージャーがすべき「3つの経験」

 前節では、プロダクトマネージャーが経営層を目指す際に陥りやすい落とし穴として「プロダクト単位の視野」「意思決定スケールのギャップ」「ファイナンス視点の欠如」を挙げました。これらを乗り越えるための方法はさまざまに存在しますが、本節では通常のプロダクトマネージャー業務の延長線上にない職種変更やマネジメント経験を戦略的に積むことを中心にご紹介します。

2-1.事業責任者や経営企画などの「職種変更」を経験する

 プロダクトマネージャーは担当プロダクトの成功に集中するため、どうしてもプロダクト単位の視野に縛られやすいインセンティブ構造になっています。これを打破するためには、広く俯瞰した視座で事業を見る役割を経験することが非常に有効です。例えば、事業責任者や経営企画など横断的な役割を持つことが望ましいでしょう。

 これらのポジションでは、複数事業や組織間でのリソース配分や優先順位の判断など、全社視点での意思決定を直接体験できます。プロダクトマネジメント業務では得られない「ポートフォリオマネジメント」の視座を身につけ、経営層に求められる戦略的な判断力を養うことができます。

2-2.非連続なテーマの「0→1」を自ら背負う経験をする

 プロダクトマネージャーが経営層との意思決定スケールのギャップを乗り越えるためには、「時間軸」と「不確実性」の質を変える経験が必要です。中でも最も実践的で効果的なのが、会社の非連続な成長を狙う0→1テーマに自らオーナーシップを持って取り組むことです。

 例えば、「まったく新しい市場に対するサービス開発」や「既存顧客層とは異なるターゲットへの事業展開」など、組織としても知見の少ないテーマは、判断材料も乏しく「今やっていることが正しいのか分からないまま判断し続ける力」が問われます。

 また、初期の仮説がほとんど外れるのも0→1の常です。何度も壁にぶつかり、前提を見直し、方向を修正する。その過程で、「判断することの重さ」や「決め切る胆力」が鍛えられていきます。これは通常のプロダクト改善や短期施策では得られない、経営層に必要な意思決定スケールの感覚です。

 さらに、こうした0→1プロジェクトでは、社内でも前例がないため、周囲の支援も得づらく、孤独に近い意思決定が求められます。この経験の中でこそ、経営層に必要な「レジリエンス」や「責任を引き受ける覚悟」が育まれていきます。

 このように、非連続な成長を狙う新規テーマに真正面から取り組み、最後までやり切るという経験は、プロダクトマネージャーが経営レイヤーに求められる意思決定スケールのギャップを超えるための、最もリアルな訓練の場となるのです。

2-3.ファイナンス視点を強化するための具体的な学習プログラムを導入する

 ファイナンス視点の欠如の課題を克服するのは、ある程度体系的な学習プログラムを組むのが良いと考えています。

  • CFOとの定期的なセッションを開催
    • 社内のCFOと協力し、月次や四半期ごとにプロダクト単位でROI、ユニットエコノミクス、キャッシュフロー管理について具体的な事例を通して学習する
  • 財務指標をプロダクトKPIに組み込む
    • 日常的なプロダクト評価において、単にユーザー数やエンゲージメント指標だけでなく、財務指標から重要なKPIを埋め込み、日常的に財務的な視点を持つことを習慣化させる
  • プロダクトユニットの予算計画の立案に責任を持つ
    • プロダクト単位で予算策定と予実管理に関与することで、収益性やコスト構造の理解が深まり、初期的なファイナンス感覚を実践的に身に着けられる

 このようなプログラムを通じて、プロダクトマネージャーは自らがプロダクトを財務的に捉える能力を着実に身につけることができます。

次のページ
3.「任せたくなる人」の振る舞い

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この記事の著者

久保 拓也(株式会社estie)(クボ タクヤ)

株式会社estie 執行役員 VPoP 兼 マーケットリサーチ事業本部 事業責任者 早稲田大学卒業後、博展に新卒入社。2013年にリクルートに転職し、HR領域でGM、拠点長などを経験。その後、ユアマイスターに参画、資金調達や中期戦略立案を推進し、プロダクト及び事業責任者として従事。2022年8...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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