はじめに
はじめまして、モノグサ株式会社でプロダクトマネージャーをしている藤原と申します。EdTechスタートアップとして、私たちの会社では「記憶の定着」に特化したSaaS型学習サービス「Monoxer(モノグサ)」を展開しています。このサービスは、学校、塾、企業をはじめとする多くの現場で活用され、記憶定着の支援とその可視化を通じて、学業成績の向上、資格取得、企業研修の効率化をサポートしています。また、昨年リリースした幼児向け学習アプリ「Monoxer Junior」は、2025 CES Innovation Awardを受賞するなど、新規toCサービスの展開も進めています。
前回の記事では新規事業の企画立案から仮説検証の過程までを紹介させていただきました。
今回は、ビジョンを軸にしたプロダクト開発と、現場の声に応えることのバランスについてお話しします。
プロダクト開発のアプローチとしてよく語られるのが「プロダクトアウト」と「マーケットイン」です。両者は対立する概念のように扱われがちですが、実際には相反するものではありません。両方をうまく組み合わせることで、よりよいプロダクトを生み出せるのです。Monoxerはプロダクトアウトの考え方がベースとなっていますが、マーケットインの大切な部分もくみ取り、うまくバランスさせ、日々開発・アップデートをしています。
プロダクトアウトとマーケットイン、それぞれの特徴
プロダクトアウトとマーケットイン、まずはこの2つのアプローチを簡単に整理してみます。
プロダクトアウト
自社の技術・アイデア・ビジョンを起点にプロダクトを開発し、市場に新しい価値を提示するアプローチです。
AppleのiPhoneやSONYのウォークマンのように、世の中になかった革新的なプロダクトを生み出し、市場そのものを創造できるポテンシャルを持っています。ただし、市場ニーズとの乖離というリスクも伴います。
マーケットイン
市場や顧客の顕在的なニーズを出発点にプロダクトを開発するアプローチです。顧客課題に直接応えるため売上予測を立てやすく、顧客満足度も高めやすいのが特徴です。一方で、既存市場での価格競争に巻き込まれやすく、革新的なブレークスルーは生まれにくいという課題もあります。
Monoxerは「ビジョン」から生まれたプロダクト
現場のプロダクト開発では、片方の手法だけに振り切ることはできません。それでも、Monoxerは「記憶をもっと容易に、より日常にすること」という明確なビジョンを起点に開発されてきました。
このビジョンは、「記憶」という普遍的な価値をテクノロジーの力で誰もが扱えるものにし、蓄積された記憶データを新しい価値へ転換するプラットフォームを目指すものです。
モノグサでは年に一度の全社合宿や中期経営計画の中で繰り返しビジョンを共有し、全社員が同じ方向を目指せるようにしています。この文化こそが、プロダクトアウトのアプローチを実現するための土台となっています。

プロダクトの成功を左右する「現場の声」との向き合い方
AppleのiPhoneのように、ビジョン主導のプロダクトは人々の生活様式すら変える力を持っています。しかしその裏には、理想と市場の現実がかみ合わず、静かに姿を消したプロダクトが数えきれないほど存在します。
そうならないために不可欠なのが、市場投入後の改善プロセス──すなわち「現場の声」との対話です。プロダクトアウトの強みである「独自性」と、マーケットインの核である「顧客ニーズ」をどうバランスさせるかこそが、プロダクトマネージャーの腕の見せ所と言えるでしょう。