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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第4回。オフラインとしては2回目の開催です。

ProductZine Day 2025

ProductZine Day 2025

SaaSプロダクトの実例から学ぶプロダクトマネージャーとチームの理想的なあり方

「ビジョン」と「現場の声」の狭間で。モノグサ流、プロダクトアウトとマーケットインの両立術

SaaSプロダクトの実例から学ぶプロダクトマネージャーとチームの理想的なあり方 第6回

Monoxer開発現場でビジョンを優先した意思決定の例

 最後に、現場の声とプロダクトビジョンを照らし合わせた結果、「プロダクトビジョンを優先する」という判断を行った事例を2つ、簡潔にご紹介します。

ケース1:「記憶度100%のハードルを下げてほしい」

 Monoxerでは、学習の定着度を「記憶度」という指標で示し、100%になると「記憶できた」と判定します。この仕様に対して、「100%の基準を緩和する設定がほしい」という要望が多数寄せられました。

 背景には、

  • 「一度正解した問題を繰り返すのは無駄に感じる」
  • 「学習が苦手な子に成功体験を積ませたい」

といった切実な声があります。

 しかし、もしこの要望に応えてしまえば、ユーザー自身が「記憶の質」をコントロールできてしまい、Monoxerが提供する「本質的な記憶定着」という価値が揺らいでしまいます。さらに、記憶の質に一貫性がなくなることは、Monoxerが掲げる「記憶のプラットフォーム」という長期的なビジョンの実現を阻害しかねません。

 そこで私たちは、機能変更ではなく、「記憶度100%の意味や価値をどう伝え、納得してもらうか」というコミュニケーション戦略を選びました。

記憶度グラフの例。学習を繰り返し、オールグリーン(すべての記憶事項を記憶度100%)を目指す。
記憶度グラフの例。学習を繰り返し、オールグリーン(すべての記憶事項を記憶度100%)を目指す。

ケース2:出題ロジックへの要望

 Monoxerは、登録された学習内容から最適な問題を自動生成・出題する仕組みを持っています。ユーザーはただ解き進めるだけで、効率的に記憶を定着させることができます。

 この根幹ロジックに対しても、

  • 「もっとランダムに出してほしい」
  • 「自分の好みの出題方式にしてほしい」

といったリクエストが寄せられます。

 もちろん、これらに応える選択肢もあり得たでしょう。しかしMonoxerは「どんな学習スタイルにも対応する万能ツール」を目指しているのではありません。

 ユーザーの声は開発の大きなヒントになりますが、モノグサのビジョンである「記憶をもっと容易に、より日常にすること」のために必要な「最も効率的に記憶が定着する体験」の提供は私たちが責任を持つべき領域です。そのため、個別要望に合わせてロジックを変えるのではなく、ビジョンを軸に改善を重ねています。

最後に

 いかがでしたでしょうか。今回は、ビジョン主導のプロダクトが「現場の声」とどう向き合うか、そのバランスについてご紹介しました。

 ここでお伝えしたのは完成形ではなく、私たち自身が日々試行錯誤しているプロセスの一部です。この記事が、同じようにプロダクトマネジメントに取り組む皆さまの振り返りや気づきのきっかけになれば幸いです。

 次回は、モノグサのプロダクトマネージャーメンバーから「デザイナーとプロダクトマネージャーの境界線(仮)」というテーマでお届けします。ぜひご期待ください。

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この記事の著者

藤原 祐二 (モノグサ株式会社)(フジワラ ユウジ)

モノグサ株式会社 プロダクトマネージャー 東京大学情報理工学系コンピュータ科学専攻修了後、新日鉄住金ソリューションズ株式会社 (現日鉄ソリューションズ株式会社)にて、ソフトウェアエンジニア、データサイエンティストなどを担当。その後LeapMind株式会社にてAIコンサルタント、FAEなどの職種...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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