ProductZine(プロダクトジン)

UXリサーチの3つの捉え方、「探索/検証」「質的/量的」「UXの要素」を理解する

プロダクトマネージャーに贈る、UXリサーチの入門と実践~ユーザーとともに価値あるサービスをつくるヒント~ 第2回

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 第1回では、「UXリサーチとはどういうものか」から始まり「サービスを作るうえでUXリサーチを活用するメリット」を紹介しました。しかし、UXリサーチを実践してみようと思うと「具体的にどんな目的の時に何を調べて明らかにすればよいのか」に迷うことがあります。そこで第2回では、 UXリサーチをする目的や対象としてはどのようなものがあるのかを紹介します。具体的には「探索/検証」「質的/量的」「UXの要素」という3つの分け方を紹介します。これらの分け方がわかれば、何を重視したUXリサーチをすべきかを検討しやすくなるでしょう。

目次

「探索」と「検証」は目的によって使い分け、組み合わせる

 UXリサーチには探索と検証という分け方があります。目的に応じて使い分けをしたり、両方を組み合わせて活用したりします。ひとつの手法を実施するなかで、検証を中心にしつつも探索も副次的にできる、といったこともあります。

 探索のためのUXリサーチでは、明確な仮説は持たずに、「いったい何が課題なのか」「何を解くべきなのか」などを調べます。解くべき正しい問いを立てる時に活用できます。探索のUXリサーチにおいて使う手法としては、「デプスインタビュー(※1)」という手法があります。

※1:ユーザーインタビューの一種。テーマについて調査者と調査協力者が一対一で行うことが特徴。

 探索のUXリサーチで期待できる結果は、いままで知らなかった新しい洞察が得られることです。例えば、「そんなことをユーザーが考えているなんて思っていなかった」「そういう生活をしているなんて知らなかった」といったものです。これらの発見があることで「こういうことに着目してサービスを作ればよいのでは?」とか「このような解決策があったらうまくいくのでは?」といった仮説を立てることにつなげられます。

 検証のためのUXリサーチは、「きっとこうではないか」「このように解決するとよいのでは?」という自分たちの仮説について調べます。正しい解決策を検討する時に活用できます。検証のUXリサーチにおいて使う手法としては「コンセプトテスト」という自分たちのコンセプトをストーリーボードなどを用いて共有してユーザーから反応を得る方法や「ユーザビリティテスト」というUIの使いやすさについて調べる方法などがあります。

 検証のUXリサーチで期待できる結果は、自分の仮説が支持されるか否かがわかることです。例えば、「Aという解決策がよいと思っているが、ユーザーは魅力を感じるのか」「BというUIならユーザーがスムーズに操作できると思っているが、本当にそうなるか」など仮説を立てて調べます。多くの場合、1回で解決策がうまくできることはありません。検証と改善を繰り返しながら、解決策を洗練していきます。

扱うデータの種類が異なる、質的/量的リサーチ

 UXリサーチで取り扱うデータの種類で分けることもあります。質的データを扱うリサーチ(質的リサーチ)と量的データを扱うリサーチ(量的リサーチ)、という分け方です。

 簡単に言えば、質的データは直接数値では測定できず足し引きなどの演算はできないデータ、量的データは直接数値で測定できて足し引きなどの演算ができるデータです。例えば、Aさんはりんごが好き、Bさんはいちごが好きといったデータは質的データに分類されます。一方で、りんごを月に何個買ってるか(比例尺度※2)や、りんごに対する満足度の5段階評価(間隔尺度※3)などは量的データに分類されます。

※2:数値の差だけでなく数値の比にも意味がある尺度のこと。
※3:数値の差が等間隔であり、数値の差のみに意味がある尺度のこと。

 質的データは、ユーザーは実際にどのような行動をしているのか、その時ユーザーはどのようなことを考えているのか、考えた結果なぜそのような行動をしたのか、といったことを調べることに向いています。筆者が質的データを得るためによく使う手法はユーザーインタビューです。例えば、サービスのある問題点について、ユーザーインタビューを通して「なぜそうなるのか」がわかれば、解決策を出しやすくなります。

 しかし、質的データだけでは量的にどの程度起きているかはわかりません。例えば「ユーザーは二度と使わないぐらいこの操作にうんざりしている」という調査結果があったとします。それを量的に調べたら「それは100人に一人しかそう思う人はいなかった」ということもありえます。なので、質的な分析結果から新たな洞察が得られたら、次はそのボリュームを量的に調べてみるという組み合わせ方も効果的です。

 次に量的データは、どこで何が、どの量で起こっているかを調べることに向いています。また、グループごとにデータを取れば比較もできます。筆者がUXリサーチで量的データを得るためによく使うのはアンケートです。例えば、アンケートを通して、新しく考えているコンセプトが市場的に受け入れられそうかや市場の規模感を推定できます。

 しかし、量的データだけではなぜ起きたのかはわかりにくいものです。例えば、ある施策について事業目標的にはよい数値が出ていたとします。しかし、質的データを分析してみたら「ユーザーは嫌だなと思いながら操作していて、もう二度と使わないと思っていた」という結果が得られることもあります。それを知らないまま同じ施策を実施し続けると、長期的には大きな損失になる可能性もあります。

 これらのことから分かるように、量的データと質的データの両方を組み合わせて活用することが有効です。


  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

著者プロフィール

  • 草野 孔希(株式会社メルペイ)(クサノ コウキ)

     電気通信大学大学院修士課程修了後、通信事業会社の研究所に入社し、デザイン方法論の研究および研究知見を活用したコンサルティングに従事。同時に社会人博士として慶應義塾大学院大学システムデザイン・マネジメント研究科にて博士後期課程を修了 博士(SDM学)。2018年11月にUXリサーチャーの一人目として...

  • 松薗 美帆(株式会社メルペイ)(マツゾノ ミホ)

     ICUで文化人類学を専攻し、2014年株式会社リクルートジョブズへ新卒入社。HR領域のデジタルマーケティング、プロダクトマネージャーを経てUXリサーチチームの立ち上げを経験。2019年より株式会社メルペイにUXリサーチャーとしてジョイン。JAIST博士前期課程在学中。

バックナンバー(新着順)

連載:プロダクトマネージャーに贈る、UXリサーチの入門と実践~ユーザーとともに価値あるサービスをつくるヒント~
All contents copyright © 2021-2021 Shoeisha Co., Ltd. All rights reserved. ver.1.5