本連載について
この連載は翔泳社から8月に刊行された書籍『はじめてのUXリサーチ ユーザーとともに価値あるサービスを作り続けるために』の一部を先出しする形で2021年6月から開始したものです。この連載を読んで実践してみたいと思った方は、ぜひ書籍も手にとっていただければうれしいです。
Weekly UXリサーチとは
毎週・隔週などのペースで定期的にUXリサーチできる枠を用意し、さまざまな案件に柔軟に対応できるようにする仕組みです。メルペイの場合、水曜をWeekly UXリサーチの日として、1回90分のUXリサーチを1日4回実施できるようにしています。この取組のメリットとして一番に挙げられるのはスピードでしょう。通常、UXリサーチをしたいと思ってからリクルーティングを始めると、数日間、場合によっては数週間ものタイムラグが発生してしまいます。しかし、あらかじめ定期的にUXリサーチができる仕組みを用意しておけば開発のスピードを落とさずに調査を実施することができるのです。これにより、プロダクトマネージャーもUXリサーチの計画を立てやすくなったり、今週の調査結果を見てデザイン変更を反映したものをまた翌週検証する、といった反復的な検証を実施できたりしています。デザインスプリントやスクラム開発などとも相性が良いでしょう。
UXリサーチを組み立てる(1)
状況を理解する
もともとメルペイでは、サービス立ち上げ初期からプロダクトマネージャーが毎週のペースでUXリサーチを継続していました。しかし、サービス立ち上げのためのプロダクトマネージャーの仕事は多岐にわたる中、UXリサーチばかりに時間を使うことは難しくなっていきました。そのような状況の中、私たちUXリサーチチームが採用されたのです。そして着任後、このWeekly UXリサーチの仕組みを引き継ぎ進化させてきました。
組み立て方
月に一度リクルーティングを行い、あらかじめ候補者の方に1か月分の予定を聞いておきます。そして予定が合う方の中から、その時々の検証内容に適した調査協力者を選定し、1回90分のUXリサーチを1日4回実施しています。どういう調査するかは直前に柔軟に決められるようにしていますが、はじめ30分でデプスインタビューを行い、60分でコンセプトリサーチやユーザビリティテストを複数案件実施することが多いです。
毎週のスケジュールは、以下のようなイメージです。
- 月曜:調査協力者確定。UXリサーチャーとプロダクトマネージャー、デザイナーとで打ち合わせし、調査の流れや検証したいことをすり合わせる
- 火曜:調査で使うプロトタイプをデザイナーに用意してもらい、UXリサーチャーが調査の設計を行う
- 水曜:UXリサーチャーが調査を実施し、プロダクトマネージャーやデザイナーは動画中継を視聴して観察する
- 木曜:UXリサーチャーがレポートを作成し、調査の結果を共有。同時に翌週の実施案件を募集し、調査協力者の条件を決めて選定する。
- 金曜:調査協力者との日程調整開始