本連載について
この連載は翔泳社から8月に刊行された書籍『はじめてのUXリサーチ ユーザーとともに価値あるサービスを作り続けるために』の一部を先出しする形で2021年6月から開始したものです。この連載を読んで実践してみたいと思った方は、ぜひ書籍も手にとっていただければうれしいです。
UXリサーチャーとして事業化に取り組んだ送金サービス「おくる・もらう」
2020年7月、メルカリの売上金やポイントを送ることができる「おくる・もらう」をリリースしました。
このような送金サービスについてはこれまで何度か検討してはいたものの、ロードマップ上の優先度が上がらず保留となっていた状況でした。そんな中、新規事業コンテストで再度検討することになったのです。UXリサーチャーもプロジェクトチームにアサインされ、PMと一緒にお客さまの体験の検討を始めました。
UXリサーチを組み立てる
状況を理解する
まずは状況を理解するために、過去のリサーチデータを統合・整理することから始めました。送金サービスについてはこれまで社内で何度かリサーチを実施していた経緯があり、そのデータが蓄積されていたのです。そのため、このプロジェクトでは新しくリサーチを行わずに検討を始めることができました。下の図のように、論点ごと・人ごとにシンプルな表にまとめることにより、お客さま間の共通点や差異などの全体的傾向をざっくりと把握するのに役立ちました。
問いを立てる
これまでの調査データから、「メルペイに送金機能があっても、相手がメルペイを利用しているか分からないので使わない」という課題が見えてきました。たしかに、家族、親しい友人、職場の人、匿名のつながりなど、送金する間柄や利用シーンによっても異なりそうです。そこで、まずは「メルペイで送金したい利用シーンはどのようなものか?」という問いを立て、明らかにすることにしました。
結果の活用を考える
UXリサーチの結果をまずは新規事業コンテストの提案に活かすのが第一の目的だったため、想定しているお客さま像や利用シーンの解像度を上げることが必要で、その時点ではサービスの要件、UIまでを細かく詰めていくためのリサーチは必要はないと考えました。