- 前回の記事はこちら:「第2回 プロダクトとビジネスの整合はとれていますか?」
ステークホルダー別の関心事と、押さえておくべきコミュニケーション
プロダクトマネージャー(PM)は目の前にあるタスク、中期的なタスク、長期的なタスク、をバランスよくさばく必要があります。つまり緊急性が高いかどうかを瞬時に判断して、適切なステークホルダーに、適切なタイミングでパスする柔軟さが必要です。言い換えると、不必要なタイミングでステークホルダーに情報共有することで、ムダなタスクや生産性のない打ち合わせが発生することを阻止しなければなりません。各ステークホルダーとの間にある暗黙知を言語化したうえで、どうしたいのか、どうあるべきかゴール像から逆算して動かなければなりません。
ビジネスモデルキャンバスと対応させると「顧客セグメント」「チャネル」「リソース」「パートナー」にステークホルダーは現れます。そこでステークホルダーごとにどんな役割を担っていて、何を重要視しているのかをあらかじめ理解しておく必要があります。私の経験から以下のように整理しました。
社内ステークホルダー
(ビジネスモデルキャンバスでは主にリソース)
経営層 ――関心事:いくら稼げるのか、リスクは可視化できているか
プロダクトに係るP/Lに責任を持っていますが、業務領域の広さから積極的にプロダクトマネジメントに介入することはありません。関心事はプロダクトから生み出される収益ですが、これをそのまま伝えるとプロダクトに対するバイアスがかかってしまうため、併せて将来性も伝える必要があります。さらにある程度の自由度(裁量権)を得るためにNGラインを握ることが重要です。
開発(チームメンバー) ――関心事:自分のやる仕事のレイヤーがどこまでか、工数管理
自身が積極的に関わるべき業務はどこまでか、その業務をどうスケジュールに落とし込むか、ということに興味関心をもっています。そのため自由度の高い指示より、制限のある指示を好むことが多いです。よりプロジェクトに没入してもらうためのゴールや背景の共有を行うことで自発性を促すことも忘れてはいけませんが、5W1Hが明確なコミュニケーションを意識しましょう。
デザイン(チームメンバー) ――関心事:自分の領域でのルールをPMと握りたい
抽象的な依頼をどれだけ言語化して具体化するか、というのがデザインチームの腕の見せどころです。最初にペルソナ設計をすることで顧客像の認識合わせと、Webサイトのトーン&マナーやフォント規定などが組まれたデザインマニュアル方針を固めましょう。最初のうちは認識のずれを埋めるためにコンセプト、ラフなどステップごとにコミュニケーションをとるなど回数を増やすことをおすすめします。
バックオフィス ――関心事:リスクを最小限にとどめたい
法務・与信管理などがこれにあたります。社外ステークホルダーとのリーガルリスク・取引信用リスクを確認するため、場合によっては第三者機関として信用調査会社経由での確認をする必要があります。PMとしては、その社外ステークホルダーを選んだ理由・背景を説明する必要があります。
社外ステークホルダー
(ビジネスモデルキャンバスでは顧客セグメント、チャネル、パートナー)
顧客 ――関心事:自分の課題をうまく解決したい
もっとも大切にしなければならないステークホルダーです。BtoC商材の場合はフォーカスグループインタビューやN1インタビューといった調査手法を通じて接しますが、BtoB商材の場合は営業パーソンと同行訪問することが多いです。プロダクトに対する不満(お宝となる改善点)を持っているか、常に向き合わなければなりません。
外部パートナー ――関心事:期待値通りの仕事を完遂したい(工数効率化)
販売代理店であれば、PRに関してどのような選択肢があるかは一通り知識を備えておく必要はあるものの、メッセージを届けたいセグメントをしっかりと伝えることができれば、その情報をベースに専門家が適切な媒体を提案してくれます。開発パートナーの場合は上述したように、依頼内容の背景理解を端的に説明することが重要です。ただしスケジュールや工数管理などを気にするため、PMとしては信頼関係ができるまでは細かなタスク確認をしながら目線を合わせてもらう必要があります。
外部コミュニティ(運営者) ――関心事:運営コミュニティに有益かどうか
SNSやコミュニティ運営者にとっては、当該プロダクトの情報を提供することで、自身のフォロワーやコミュニティ参加者は喜んでくれるかどうか、を第一に考えます。PMとしてはプロダクトとの親和性が期待できそうなコミュニティが、インターネット上にどの程度存在するのかを把握しておくとよいでしょう。
サポーター ――関心事:プロダクトを使って自分の価値が上げられるか
顧客や外部コミュニティにも似た属性ですが、実際にはエバンジェリストやインフルエンサーといったサービスのコアなファンとして、こちらから依頼せずとも口コミを通じてプロダクトを広めてくれる存在です。その背景として、自身の新しい仕事につながったり、プロダクトを自身の取引先や知り合いに紹介することで感謝されたりするかを重視しているという側面もあります。外部コミュニティ同様、定期的に意見を聞く必要があります。