連載で取り上げる企業と着目点
本連載で、主に対象とするスタートアップは、ある程度米国でのビジネスの地歩が固まり、日本を含む海外展開を視野に入れ始めたステージを想定している。単なる企業やソリューションの紹介にとどまらず、それらが注目されるに至った背景――米国でのビジネストレンドの変遷や技術的進歩――もあわせてお伝えすることで、読者の皆さんのビジネスにおけるヒントになれば幸いだ。
Motionloft――コンピュータビジョンによる動線分析
本コーナーの第1回で取り上げるスタートアップは、2010年設立で、サンフランシスコ市内に本社を構えるMotionloft社である。インタビューに対応いただいたのは、CEOのJoyce Retiman氏、APACアカウントマネージャーの金本太一氏、VP of EngineeringのPaul McAlpine氏である。
Motionloftが提供するソリューションを一言でいえば「コンピュータビジョンによる人や車の流れの分析(動線分析)」である(注1)。MotionloftはViMoというセンサーデバイスをユーザに提供し、これで撮影された画像をリアルタイムで分析することで、人や車の混雑状況や動線、さらに(プライバシーを考慮した)属性情報を取得する。解析結果は、Motionloftが提供するWebベースのダッシュボードで確認することができるほか、ファイルによるエクスポートやAPIによって外部システムへデータ連携を行うこともできる。
Motionloftがターゲットとする市場は、スマートシティのような広域・街中での人や車の流れを把握するというマクロな市場から、小売店舗内での買い物客の動線把握や混雑分析といったミクロな市場まで多岐にわたるが、著者が理解する限り、同社の主戦場は前者、すなわち屋外や広域にある。
ViMoによって取得することのできるデータには、たとえば以下のようなものがある。
- 道路の混雑時間帯/空いている時間帯
- 人や車のある場所における滞留時間
- ヒートマップ
- 男性・女性の比率
- 駅や店舗への一定期間での来訪者数
こうしたデータを取得することで、たとえば、駅や店舗の入り口を通過した歩行者の数や、実際に電車に乗ったり入店した割合を知ることができる。また、広告柱やデジタルサイネージに設置すれば、滞留時間からどの程度の人数の人が対象を見たのか、その人の性別や年齢はどうだったのかという属性情報も把握できる。
米国ではすでにスマートシティや都市計画といったユースケースで多くの実績を持っており、日本においてもJR東日本が大宮駅でデジタルサイネージの認識率に関する実証実験を行ったことも話題となった(参考:Impress Watch「AIで新幹線の混雑を予測。JR東日本が大宮で未来の駅提案」)。
注1
本稿では「コンピュータビジョン」という言葉を、「カメラによる撮影+AIによる画像解析」という組み合わせでパッケージされたソリューションの総称として使う。