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ProductZine Dayの第4回。オフラインとしては2回目の開催です。

ProductZine Day 2025

ProductZine Day 2025

プロダクト時代の新たな事業成長モデル「Product-Led Growth」入門

有料転換率を改善せよ、PLGの運用フレームワークに基づいた施策の考え方・進め方

プロダクト時代の新たな事業成長モデル「Product-Led Growth」入門 第2回


 第1回では、PLG(Product-Led Growth: プロダクトレッドグロース)の概要を説明すると共に、PLGとは「プロダクト」を事業の収益源としてビジネス成長の中心に据え、「プロダクト主導」で推進する事業成長モデルであることをご紹介しました。その中で、ユーザーが「なるほど、これは便利だ!」と感じる「Ahaモーメント(Aha moment)」をプロダクト内で体験し、購入を検討してもらうといったPLGの運用フレームワークも解説しました。今回は、このフレームワークの「①興味・関心」「②Ahaモーメント」「③価値の交換」を中心に、その運用方法についてご紹介します。

PLGの運用フレームワーク(第1回より再掲)
PLGの運用フレームワーク(第1回より再掲)

1. ユーザー行動の把握

 PLGでは、何よりもプロダクトを利用するユーザーの行動を把握することが肝要です。プロダクトによって異なるユーザー行動を、どのようにデータで可視化し、どのように具体的な施策につなげるか。フレームワークだけを見ても、いまいち詳細なイメージが浮かばないかもしれません。そこで今回は、日本を含む世界各国で事業を展開する、あるフィンテック企業の事例を見てみましょう。

 この企業は為替取引に利用できる金融サービスをSaaSで展開しています。限定された機能をフリーミアムで解放し、より充実した機能を使いたいユーザーに対してはサブスクリプションを提供する、といったPLGモデルを運用しています。

 しかしこのサービスでは、無料ユーザーが増加している一方で、サブスクリプションへの有料転換率が1%未満という課題がありました。それを解決するため、担当者は以下の点に着目しました。

  • サービス利用の継続率が高い無料ユーザーが、頻繁に利用している機能の算出

 上記のポイントを確認したところ、サービス利用の継続率が高い無料ユーザーは、主に以下の機能を頻繁に利用していることが判明しました。

  • リアルタイム為替レート機能
  • 為替履歴ダウンロード機能

 「リアルタイム為替レート機能」が頻繁に使われている、という予測は以前からあったものの、「為替履歴ダウンロード機能」も頻繁に利用されていることは、プロダクトアナリティクスのユーザー行動分析によって導き出された発見でした。

 このユーザー行動をより詳細に分析すると、ユーザーは最大6か月単位で為替履歴をダウンロードできる「為替履歴ダウンロード機能」を複数回利用していたことが判明しました。ユーザーはダウンロード期間をずらすことで、6か月ではなく年単位の為替履歴を入手していたのです。つまり、フリーミアムで提供する機能の制限が緩かったのです。

 そこで、フリーミアムでの「為替履歴ダウンロード機能」の利用を1回に制限し、A/Bテストを実施しました。その結果、サブスクリプションへの転換率が75%向上し、売上を大きく伸長させることができました。ユーザーは、「為替履歴ダウンロード機能」を複数回利用できることにサービスの価値を感じていたため、この部分に変更を加えることで、ユーザーが「価値の交換」状態へと遷移したことになります

次のページ
2. 相関関係の算出(マジックナンバー)

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この記事の著者

米田 匡克(Amplitude Inc.)(ヨネダ マサカツ)

 Amplitude Inc.カントリーマネージャー。  三菱電機株式会社 情報技術総合研究所で技術者としてキャリアをスタート。その後、外資系企業に転職し、Gemstar TV Guide で取締役副社長、Entropic Communications で代表取締役社長、Chartboost、LEANPLUM でカントリーマネージャーとして日本代表を歴任。2019年よりユーザー行動分析から先行指標が求める事ができるプロダクトアナリティクスを提供す...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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