1. ユーザー行動の把握
PLGでは、何よりもプロダクトを利用するユーザーの行動を把握することが肝要です。プロダクトによって異なるユーザー行動を、どのようにデータで可視化し、どのように具体的な施策につなげるか。フレームワークだけを見ても、いまいち詳細なイメージが浮かばないかもしれません。そこで今回は、日本を含む世界各国で事業を展開する、あるフィンテック企業の事例を見てみましょう。
この企業は為替取引に利用できる金融サービスをSaaSで展開しています。限定された機能をフリーミアムで解放し、より充実した機能を使いたいユーザーに対してはサブスクリプションを提供する、といったPLGモデルを運用しています。
しかしこのサービスでは、無料ユーザーが増加している一方で、サブスクリプションへの有料転換率が1%未満という課題がありました。それを解決するため、担当者は以下の点に着目しました。
- サービス利用の継続率が高い無料ユーザーが、頻繁に利用している機能の算出
上記のポイントを確認したところ、サービス利用の継続率が高い無料ユーザーは、主に以下の機能を頻繁に利用していることが判明しました。
- リアルタイム為替レート機能
- 為替履歴ダウンロード機能
「リアルタイム為替レート機能」が頻繁に使われている、という予測は以前からあったものの、「為替履歴ダウンロード機能」も頻繁に利用されていることは、プロダクトアナリティクスのユーザー行動分析によって導き出された発見でした。
このユーザー行動をより詳細に分析すると、ユーザーは最大6か月単位で為替履歴をダウンロードできる「為替履歴ダウンロード機能」を複数回利用していたことが判明しました。ユーザーはダウンロード期間をずらすことで、6か月ではなく年単位の為替履歴を入手していたのです。つまり、フリーミアムで提供する機能の制限が緩かったのです。
そこで、フリーミアムでの「為替履歴ダウンロード機能」の利用を1回に制限し、A/Bテストを実施しました。その結果、サブスクリプションへの転換率が75%向上し、売上を大きく伸長させることができました。ユーザーは、「為替履歴ダウンロード機能」を複数回利用できることにサービスの価値を感じていたため、この部分に変更を加えることで、ユーザーが「価値の交換」状態へと遷移したことになります。