編集部注
記事掲載時点(2023年12月)では、当該セッションについては未公開だが、イベント登録者にはEventHubで順次公開が予定されている。
プロダクトビジョンは仮説と対話によって時間をかけて描いていくもの
花井氏とレビン氏はAmazonの食料品チームで一緒に働いた元同僚で、当時Amazon Fresh Primeの主要プロダクトを担当していた。その後Amazonが食料雑貨チェーンのWhole Foods Marketを統合し、レビン氏はその組織全体のプロダクトリーダーとして活躍していた。そして2年ほど前にスタートアップであるSeason Health(以下、Season)に参画した。
Seasonは食品を医療の一部として提供するプラットフォームだ。特に糖尿病や腎臓病、高血圧、うっ血性心不全など食品関連の慢性疾患が多いアメリカにおいて、食品をヘルスケアに取り入れることが重視されている。しかし、食品と医療の結びつきは十分ではなく、クリーンなAPIがお互いにないという問題があり、Seasonではそれを解決するプロダクトを展開している。
レビン氏は元々プロダクトマネージャーを目指していたわけではなかった。大学時代は舞台照明デザインに情熱を傾け、後にビジネススクールに進学する。2011年にはAmazonでのプロダクトマネジメントのインターンシップを経て、事実上のプロダクトマネージャーになった。
10年以上Amazonにいて、2年ほど前にアーリーステージのスタートアップであるSeasonに移ったことは、レビン氏にとって大きな転機であった。当時Amazonの従業員数は120万人、Whole Foodsは約9万人で、レビン氏はSeasonの21番目の従業員だった。
入社早々、Webサイトのランディングページを変更するアイデアが生まれ、CTOが即座にそれを実現させたのをレビン氏は目の当たりにし、「私は入念な調査や上司の承認が必要だと思い込んでいましたが、この小さなスタートアップでは、自分たち以外に頼る人はいないということに気づき、とても爽快な気分になりました。自分にはこの環境が必要だったと感じたのです」と語った。
花井氏はレビン氏にプロダクトリーダーたちが抱える悩み「どのように説得力のあるプロダクトビジョンを設定し、それを目標に変換し、そして実行するのか」を尋ねた。
Seasonのプロダクトビジョンの設定は成功したものの、そのプロセスは複雑で混沌としていたという。レビン氏は「ビジョンは最初にすぐ描くものではなく、強い仮説として扱い、必要に応じて柔軟に変更するべき」だと語る。起業の初期に確固たるビジョンで始めると、すぐに変更が必要になることもある。レビン氏はSeasonに入社してから2年間で、栄養と慢性疾患に関する明確なビジョンを設定したが、多くの分岐点をまとめるのに苦労した。
また、ビジョン設定には対話も重要で、自分たちが何をしようとしているのかを説明する際に対面でリアルタイムのフィードバックを得ていった。レビン氏は異なるやり方を試し、次第に人の心に響くような言葉に収束していき、「栄養に関連した慢性疾患で誰も苦しまない世界を創造する」というビジョンにたどり着いた。
ビジョンがあるだけではプロダクトは生まれず、ビジュアルやプロトタイプ、文書化されたプロダクトの概要などが必要だ。レビン氏は「プロトタイプを作ることに勝るツールは他にないと思います。私は可能であればとにかくプロトタイプを作るようにしています」と述べた。