エン・ジャパンにおけるプロダクト志向の定義と実践
続いて吉田氏は、エン・ジャパンにおける「プロダクト志向」の定義について説明を始めた。同社ではプロダクト志向は「情熱」「オーナーシップ」「ドメイン理解」「技術力」の4つの要素から成り立っており、これらが重要であると考えている。
まず「情熱」については、エンジニアやプロダクトマネージャーが持つ成長意欲やプロダクトを成長させるためのエネルギー、そして組織カルチャー全体に影響するもの。
次に「オーナーシップ」は、プロダクト開発における意思決定権が開発チームにあること、そしてプロダクト開発を自分の責任として捉える姿勢を指している。
「ドメイン理解」については、開発しているプロダクトであるengageやその関連業界である人材業界、競合サービスの理解が重要であり、これをドメイン理解としている。
最後に「技術力」だが、エンジニアに求められるのは設計、実装、テストを独力で完遂する力と、運用監視をデザインする能力だ。開発だけでなく運用監視も含め、すべてを内製で行うことを目指している。
プロダクトマネージャーには、エンジニア視点が求められる。吉田氏は「エンジニアと共通の言語を持つことや、非機能要件を理解する力をつけることで、エンジニアとのコミュニケーションが円滑になり、エンジニアも働きやすくなります」と説明した。
吉田氏は、エン・ジャパンのエンジニア組織において、プロダクト志向の4要素のうち「情熱」「ドメイン理解」「技術力」についてはすでに達成しており、それぞれどのように取り組んできたかを説明した。
「情熱」の醸成に関しては、自社の理念を基にプロダクト作りを進めながら、理念の発信を継続的に行うことで共感者を増やすことに注力してきた。サービス理念と会社の理念を一体化させ、その発信を続けることで、より多くの共感を得ることができている。また、互いに賞賛し合う文化作りを推進している。例えば、売上達成時の祝賀会を全員で行い、自分たちが優れたプロダクト作りに関わっているという熱狂を共有している。さらに、新しい取り組みを奨励し、挑戦を歓迎する文化や仕組み作りにも力を入れている。
吉田氏は、「エンジニアとして新しい技術や挑戦に向き合うことが求められるため、心理的安全性を確保し、チャレンジしやすい環境を整えています」と加えた。
「ドメイン理解」のために、プロダクトマネージャーであるドメインエキスパートがエンジニア向けに説明会を開いている。内製開発チームはまだ立ち上げから2年半ほどで、中途採用のメンバーが中心となっているため、新たに参加したメンバーがプロダクトの理解を深めるための取り組みとして行っている。不定期ではあるが、engageの生みの親である取締役 寺田輝之氏とエンジニアが交流し、engageに込められた思いやビジョンを共有し、理解を深める場も設けられている。
また、スクラム開発を採用し、プロダクトマネージャーとエンジニアが同じチームで連携する体制を取っており、その結果、プロダクトに関するコミュニケーションが非常に活発に行われている。吉田氏は「ユーザーストーリーについての理解や共有を行うスクラムのイベントも行っています。エンジニアは、要件をどう実現するか(How)に注目しがちなので、意識的に、なぜ(Why)、何を(What)議論するようにしています」と述べた。