スタートアップから見た、大企業と提携するメリットとは
まずはスタートアップの視点から、プロダクト開発にどのような影響があったのか、フライウィールの大附克年氏が語る。大附氏が挙げたポイントは、「データ」「営業ネットワーク」「信頼」の3つ。それぞれ詳しく見ていく。
①データ
データテックのスタートアップにとって、データは燃料のようなものだ。しかし、個々の企業が保有するデータは、ボリュームが大きくなかったり、汎用的ではなかったりする。その点、通信キャリアは、ユーザーのデータ、決済サービスのデータ、スマートメーターのデータなど、実に多種多様なデータを保有している。しかもその量は膨大だ。資本業務提携なしに、このようなビッグデータをスタートアップが取り扱えるようになるのは、難しかったはずだ。
「データに限らず、資本業務提携によって大企業のアセットを使えるようになるのは、スタートアップにとって大きなメリットである」(大附氏)
②営業ネットワーク
フライウィールの事業はB2Bであり、関係性のない企業に売り込むには、時間と労力がかかることになる。だが、KDDIの法人営業ネットワークは非常に大きい。資本業務提携によって、この営業ネットワークを利用できるようになることは、営業面だけでなくプロダクト開発の面においても、大きな意味を持つという。
「KDDIと資本業務提携を締結したことで、さまざまな企業とお話しする機会を持てるようになった。良いプロダクトをつくるためには、実際に企業が抱える課題を手触り感を持ってキャッチアップすることが極めて重要だ。個々の企業がどのようなデータを蓄積して、どのように管理しているのか。データ活用に、どのような課題を感じているのか。こうした話を直接聞けるのは、大きなアドバンテージになっている」(大附氏)
③信頼
フライウィールの事業では、顧客企業のデータを取り扱うことになる。言わずもがなデータとは、非常にセンシティブなものである。そのため、セキュリティやガバナンスが技術的にしっかりとしていることはもちろんのこと、そもそも企業として信頼のおけるパートナーであることが求められる。これはスタートアップにとって、1つの大きなハードルになる。
だが、「“KDDIグループ”という看板を手に入れたことで、顧客企業の信頼を得やすくなった」と大附氏は明かす。KDDIの高いセキュリティ基準に準拠するために苦労はしているものの、それによって得られる信頼の価値は非常に大きいものだという。
「実際、大手メーカーのビッグデータを取り扱えるようにもなったし、そこでフィードバックをもらいながらプロダクトを進化させることもできている。これは、なかなか普通のスタートアップでできることではない」(大附氏)