チーム運営における図活用の実践と心理的効果
木村氏のチームでは、日常業務において図を活用した共通テンプレートを体系的に運用している。朝会では各メンバーの作業状況を可視化するため、カンバン形式のテンプレートを用いている。
「各メンバーが、今どのタスクに取り組んでいて、どれが保留状態かを1枚のシートで確認できるようにしています。これにより、誰がどの作業を抱えていて、タスクが過剰になっていないかを把握しやすくなります」と木村氏は説明する。

週次の振り返りでもテンプレートを活用している。「振り返りのためのシートがあり、それを使って『今週はこういうことがありました』『この課題が解決できて良かったです』『この点が難しかったです』といった内容を整理しています」と語る。
共通テンプレートの利点は、思考の統一にある。木村氏は「同じテンプレートを全員が使うことで、思考の流れもそろいます。これは“思考のテンプレート”とも言えるもので、説明しやすく、相手にも伝わりやすい。共通のフレームワークとして機能しています」と強調する。
基本的にリモートワークが中心となるヌーラボでは、オンラインホワイトボードを積極的に活用している。木村氏は、海外メンバーとのやりとりがうまくいかず、リリース直前に不具合が発覚してリリースが遅れた場面で、オンラインホワイトボードを用いて情報を整理し、問題解決につなげたエピソードを紹介した。
「何が起こったのかを整理し、どこに課題があったのか、今後同様の問題をどう防ぐかを話し合う場としてホワイトボードを活用しています。全員が一つのボードを見ながら考えることで、前向きで建設的な意見が出やすくなると感じています」と木村氏は語る。
一方で、図やホワイトボードなど視覚的に情報を整理できないビデオ会議には課題もあるという。
「顔だけが見えている会議では、話が感情的になりやすく、問題の本質が見えなくなってしまうことがあります。『誰が悪いのか』『どこが悪いのか』といった責任のなすり合いのような議論になってしまうこともあります」と指摘する。
その点、図やホワイトボードによって情報を共有することは、議論を前向きに転換するきっかけになる。
「顔だけを見ていると個人間の対立のように感じられがちですが、図やホワイトボードで視覚的に情報を共有することで、『この課題に対して自分たちは何ができるか』という視点で議論が進みやすくなります」と木村氏は語った。
