顧客インタビューを起点とした指標設計プロセス
新たな指標設計は、松木氏の上長であるCFO兼CPOである中出昌哉(なかで・まさや)氏との協働で進められた。松木氏は「上長が事業計画を作り、プロダクトのロードマップを一緒に作る中で、事業の数値が目に見えて分かる状態でモノを作っています」と、経営視点との連携の重要性を強調する。
指標設計のフレームワークとして、同社では「分析・観察・体験」の3つのアプローチを採用している。まず分析フェーズでは、顧客の問い合わせ量減少という成果指標に対する相関要因を探り、「テックタッチ」の使用回数が多いほど、問い合わせ量が減少するという相関関係を発見した。「テックタッチ」による操作ガイドや吹き出しの「再生回数」が重要な先行指標となることが分かったのだ。
続く観察フェーズでは、50~60名の顧客インタビューを実施した。インタビュー対象は、「テックタッチ」で表示するガイドを作成する顧客のDX担当者から、実際にシステムを操作するエンドユーザー、そして導入意思決定を行う決裁者まで幅広くカバーした。松木氏は「継続利用している人はどこで『テックタッチ』を認知し、なぜ何回も使い続けているのかを20〜30人にインタビューしてジャーニーパターンを描きました」と説明する。

このインタビューを通じて、複数の利用パターンが明らかになった。例えば経費精算システムで操作方法が分からない場合、隣の詳しい人に聞くパターン、問い合わせで担当者に確認するパターンなどがある中で、「詳しい人が『テックタッチ』を紹介したり、問い合わせ返信で『テックタッチ』のリンクを案内したりすることで、継続利用につながる」という成功パターンが浮かび上がった。
最後の体験フェーズでは、松木氏自身が顧客と同様にシステムを操作し、困りごとを実感することで改善ポイントを特定した。「自分でシステムを実際に使ってみて、『確かにこのタイミングで『テックタッチ』が表示されなければ自発的に利用しようと思わない』と痛感し、どうすれば解決できるかを考えました」と語る。