さらなる課題克服と、AIを活用する次なる挑戦
一連の取り組みで最も苦労したのは、指標の継続的運用だった。指標を作ること自体は簡単だが、これを運用して改善していくには困難が伴う。松木氏自身、入社1年目にも同様の取り組みを試みたが失敗した経験があることを明かした。
今回成功した要因について松木氏は、トップダウンとボトムアップの両面アプローチを挙げる。
「ビジネス部門は短期的にインパクトが出る施策の優先度が上がりがち。仮説を立てて意見を吸い上げると同時に、ビジネス部門の役員も巻き込み、課題意識の提示による目線合わせと、現場で推進する人たちの納得感醸成を意識しました」
改めて松木氏は経営視点との連携の重要性を強調し、プロダクトマネージャーの役割をプロダクト開発にとどまらず、会社全体の成長に貢献することと捉えているとした。
「CFOとして事業計画やPLの責任を持つ上長から、各経営陣がどういうことを考え、どこにボトルネックを感じているかを日常的に聞く機会があります。これにより、何をすれば一番経営インパクトがあるかを考えられ、それはプロダクト改善だけではないことが分かりました」
次なるチャレンジとして、松木氏はAIを前提としたプロダクト開発を掲げる。「これまでは人が使う前提で設計された体験にAIを少し当てはめるという発想でしたが、それではインパクトが限られます。AIを前提とした体験を考えることで、これまでの体験をディスラプトしていきたいです」という展望を語る。
そのために顧客のAI活用支援と自社でのAI活用の両面で取り組みを進めている。自社活用の例として、企画書作成業務のAI化を実現した。企画書を書く際のさまざまなインプット情報とPRDフォーマットをLLMに学習させ、8割程度の企画書を自動生成する仕組みを構築し、月に延べ30時間(一人あたり5時間×6名)程度の業務削減という成果を上げている。
松木氏は「一人が解決できるイシューの数が大幅に増え、ディスカバリーできる量も増えます。これにより立ち上がるプロダクトの数も増えていくのではないでしょうか」と、AI活用による業務効率化の可能性に期待を寄せている。