チームを率い、自らもスケールする道
連載の後半(第4回・第5回)で語られたのは、1人目PMがチームで成果を出し、プロダクトと組織をスケールさせていくプロセスだ。
蜂須賀氏は、新任PMが信頼を得るためには「成果を残すこと」と「感謝を勝ち取ること」が不可欠だと説く。過去の実績は役に立たない。まずはチームの状況を理解し、仕様決定のフォーマット整備など、自分一人で解決できる小さな課題を見つけて解決することで「信頼貯金」を貯めていくことが、仲間として認められる第一歩となる。
そしてチームが機能し始めた先にあるのが、スケールの壁だ。1人目PMは社内で最も多忙な人物になりがちだが、ここでリーダーへと飛躍できるかの分水嶺が存在するという。
「忙しい中で『余白』を作り、スケールのための仕組み作りに時間をかけられるかどうかが、リーダー(CPOやVP of Product)になれるかの分水嶺です。(中略)PMがボトルネックにならず、チームが自律して前に進める状態を目指しましょう」
その「余白」で権限移譲を進め、自身はより上位の戦略的な仕事に取り組む。そうして組織をスケールさせた先には、CPOや事業責任者といったキャリアパスが拓けていく(第6回)。もはや社長の考えをトレースする存在ではなく、自らがビジョンを描き、事業や業界の未来を動かす存在へと変貌を遂げるのだ。
未来の「ミニCEO」たちへ
本イベントで一貫して語られたのは、1人目PMが単なるプロダクト開発の責任者ではなく、「事業を創造する存在=ミニCEO」であるべきだという力強いメッセージだった。
最後に蜂須賀氏は、この連載がPMコミュニティの協力のもとで完成したこと、そして現在、内容をさらに発展させた書籍化を企画していることを明かした。
今回のレポートで紹介した内容は、1人目PMとして奮闘する当事者だけでなく、これからその役割を目指す者、そしてPMと協働するすべてのビジネスパーソンにとって、プロダクト主導の事業成長を考える上で重要な示唆に富んでいる。
まずは自社のPLに目を通してみることから、あるいは社長の言葉を自分の言葉で語る練習から始めてみてはどうだろうか。その一歩が、未来の「ミニCEO」への道を切り拓くのかもしれない。