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Developers Summit 2026 「Dev x PM Day」

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AI時代の「顧客理解」:プロダクトマネージャーが持つべき視点と実践

AIが分析できない「顧客の熱量」とは。AIの“スマートさ”と“泥臭さ”を両立すべき理由

AI時代の「顧客理解」:プロダクトマネージャーが持つべき視点と実践 第3回

 コミューン久松氏による「AI時代の顧客理解」連載、最終回。AIで顧客分析が高度化する今、なぜあえて「顧客の生の声」を聞くアナログな施策が必要なのか。本記事では、同社が実践する「信頼起点経営」を軸に、AIで効率化する「スマートさ」と、顧客と愚直に向き合う「泥臭さ」を両立させる哲学を論じる。AIが分析できない顧客の「熱量」が、いかに開発チームを動かし、プロダクトを成長させるのか。その実践例を紐解く。(編集部)

はじめに:AI時代になぜ「顧客の声」を聞くのか

 こんにちは。コミューン株式会社の久松です。

 3回にわたる本連載も、今回が最終回となります。第1回では「社内をAI活用の実験場にすること」、第2回ではプロダクトマネージャーとデータサイエンティストに共通して求められる「課題理解スキル」についてお話ししてきました。これらはすべて、AIという強力なツールを使いこなし、プロダクトの価値を最大化するためのアプローチです。

 しかし、AIの進化が加速する現代において、私たちは1つの根源的な問いに立ち返る必要があります。AIが顧客データを分析し、示唆を与えてくれる時代に、私たちはなぜ、これまで通り、これまで以上に顧客の“生の声”に耳を傾ける必要があるのでしょうか?

 最終回となる本稿では、AIという最先端の「スマートさ」と、顧客と愚直に向き合う「泥臭さ」をいかに両立させ、事業成長の力に変えていくか。私たちの実践と哲学についてお話しし、本連載を締めくくりたいと思います。

信頼起点経営とは

 まず、私たちが掲げる「信頼起点経営」とは何か、その定義からお話しさせてください。

 それは、「顧客や従業員と信頼関係を育み、その力を事業に活かすこと」です。

信頼起点経営の概念図
信頼起点経営の概念図

 例えば、顧客からのフィードバックを元に製品開発を行ったり、顧客が他の顧客の質問に答えてくれるようなサポートコミュニティが生まれたり、あるいは顧客が新しい顧客を紹介してくれたり。これらはすべて、企業と顧客の間に強固な信頼関係があって初めて生まれる現象です。

 すべてのスタートは、目の前の顧客を何よりも大切にし、価値を提供し、信頼を築くこと。その信頼が、事業を非連続に成長させる最も強力なエンジンになる。私たちはそう信じています。

 そして、同じことが企業と従業員の関係にも当てはまります。私たちは、顧客と同様に、従業員との信頼関係の構築も極めて重要だと考えています。従業員の満足度が向上すれば、自然と顧客体験の質も高まり、逆に顧客の喜びや感謝が、従業員の誇りや働きがいにつながる──この好循環が、組織全体の成長を後押しします。

信頼の好循環(顧客と従業員)の図
信頼の好循環(顧客と従業員)の図

 しかし、この思想は時として、日々の業務の現実と矛盾をきたします。顧客に向き合いたいと思っていても、日々の仕事に追われ、時間が足りない。これが多くの企業の現実ではないでしょうか。そして、この矛盾を解決する鍵こそが「AIの活用」にあるのです

なぜ信頼起点経営にAIが必要なのか

 「顧客との直接的な対話が重要だ」と強調しながら、「AIの活用を推進する」。これは一見、矛盾しているように聞こえるかもしれません。しかし、私たちにとってこの2つは、信頼起点経営を実現するための両輪です。その理由を2つのポイントに分けてご説明します。

1.人にしかできないことに時間を生み出す

 私たちのクライアントである企業のコミュニティマネージャーやマーケティング担当者の皆さんは、日々非常に多忙です。本当はもっと顧客とコミュニケーションを取りたいのに、日々の業務に追われて時間が作れない。この課題を解決するのがAIです。

 今まで人が行っていた議事録の作成やデータ分析といった作業をAIが代替することで、人はより付加価値の高い、創造的な仕事に時間を使うことができるようになります。つまり、AIで業務を効率化するのは、単なるコスト削減が目的ではありません。それによって生まれた時間とリソースを、人にしかできない、顧客との対話や関係構築といった活動に振り向けるためなのです

2.非構造化データを分析し顧客理解を深める

 近年の生成AIの進化がもたらした最大のブレイクスルーは、これまで分析が困難だった「非構造化データ」を扱えるようになった点です

 会議の書き起こし、音声データ、画像、そしてそれらを組み合わせたマルチモーダルな情報。これまでは専門家が多大な時間をかけなければ分析できなかった、あるいは分析自体を諦めていたようなデータから、AIは新たな示唆を導き出せるようになりました。

 これにより、私たちはこれまで以上に多角的に、そして大規模に顧客を理解する新たな武器を手に入れました。AIは、顧客理解の深化においても、強力なパートナーとなり得るのです。

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あえて実施するアナログな施策「機能開発投票フェス」

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この記事の著者

久松 佑輝(コミューン株式会社)(ヒサマツ ユウキ)

2017年Speeeに新卒で入社し、データサイエンティストとして広告配信アルゴリズムの開発に携わる。その後Datachainに出向し、プロダクトマネージャーとしてナショナルクライアントとブロックチェーンを活用したPoCを複数成功に導く。2021年5月にコミューン入社。2024年8月執行役員CPOに就...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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