※ Allied Tech Base Co.,Ltdはベトナム・ハノイ市に位置する子会社。Allied Tech Camp Co.,Ltd.はベトナム・ホーチミン市に位置する子会社。アライドアーキテクツは国内本社を含む3拠点でサービス開発を行っている。
日本とベトナム間の連携がうまくいかなかった過去
――アライドアーキテクツには、Allied Tech BaseやAllied Tech Campというベトナム拠点が存在しています。インタビュー前編では日本の組織構築について話していただきましたが、当時のベトナムのメンバーとの関係性はいかがでしたか?
岩間:正直なところ、かつては日本とベトナム間でうまく連携がとれていない状況でした。日本側から提示した要件をベトナム側で開発するだけの、受託開発のような形態になっていたと思います。プロダクトをより良いものにしていこうとか、品質を向上させようという意識が、ベトナムのメンバーには希薄な状態でした。
――なぜ、そのような状態だったのでしょうか?
岩間:日本企業と取引のあるベトナムのIT企業の多くは、オフショアによる受託開発を主な業務としています。アライドアーキテクツのベトナム拠点にも、そういった企業で経験を積んだ方が中途入社するケースがほとんどです。そのため、提示された要件の通りにプロダクトをつくるのが仕事、というマインドで働く人がどうしても多くなってしまいます。また、ベトナムのメンバーがそういったマインドにシフトするために必要な情報が適切に共有される仕組みも整備されていませんでした。
――受託開発だというマインドで仕事をするのと、自分たちのプロダクトだと思って仕事をするのとでは、アウトプットはどのように変化するのでしょうか?
岩間:受託開発だと考えてしまうと、たとえ提示された要件がプロダクトの成長に結びつかないものだとしても、“そう言われたから”その通りに開発してしまいます。一方、自分たちのプロダクトだと思って仕事をしていると、何かの要件が提示された際にも、「なぜそれが必要なのか?」を考えることから始まるので、自然と改善案などの意見が出てくるようになります。つまり、エンジニアのマインドそのものがプロダクトの利便性や品質にも影響してしまうのです。
プロダクトを中心とした組織への再編
――メンバーのマインドをどのようにして変えていきましたか?
岩間:「One Team, One Goal」というエンジニアチームのスローガンを定めました。日本とベトナムが連携をとっていくうえで、組織のビジョンを示す力強いメッセージが必要だと考えたからです。このスローガンには、私たちは発注する側・される側という関係性ではなく、職種や国籍に関わらずグループとして全員が同じチームとして、ひとつのビジネスゴールを追うんだという想いを込めています。
そして、日本のメンバーがベトナムのメンバーに対して、プロダクトのロードマップやグループ全体の経営状況を説明したり、成果物に対するフィードバックを丁寧に行ったりと、地道なコミュニケーションを続けました。ベトナムのエンジニアたちの意識が変わるまでに年単位の時間がかかりましたが、徐々に彼らはプロダクトを支えていくという気持ちを持って、仕事に取り組んでくれるようになりました。
――地道な取り組みが実を結んだのですね。
村岡:当時と現在とで、大きな変化だと感じることがあります。かつてベトナムのメンバーは、プログラムの不具合が原因で本番環境に障害が起きていても、就業時間が過ぎれば帰っていました。なぜなら当時の彼らは「言われたことをやるのが仕事。障害対応は指示されていないから、私たちは対応する必要がない」と考えていたからです。
しかし、いまでは夜中に機能をリリースする場合でも、彼らは自宅から本番環境にアクセスできないにもかかわらず、Slackを開いて待機してくれていて「何かあれば対応します」と伝えてくれるようになりました。これは、私たちが醸成してきた文化の結果だと思っています。
――日本とベトナムの両拠点で組織が改善していくにつれ、プロダクトもV字回復を遂げたと伺いました。なぜ、事業としての成長を実現できたのだと思いますか?
石川:組織そのものが、プロダクトを中心として再構築されたからだと考えています。
SaaS型プロダクトの開発においては、サービスを改善し続けて顧客への提供価値を大きくする、という成長のサイクルを回すことがとても重要です。セールスやエンジニア、カスタマーサクセスといった職種の違いは、あくまでその目的を実現するための役割分担でしかありません。目指すところはみな一緒です。しかし、かつてのアライドアーキテクツは、各々の役割に終始してしまっており全員が同じ方向を向いて働けていませんでした。
ビジネスサイドとエンジニアサイド、日本側とベトナム側といったすべてのメンバーが密にコミュニケーションをとるようになったことで、全員が同じ目標に向かうチームだという共通認識が生まれました。それが、事業や開発のサイクルにも好影響を及ぼしたのだと考えています。