自走できるチームを育成するのが、アジャイルコーチの役割
「自分たちの力で考えることのできる、アジャイルチームを育てること」――これがアジャイルコーチの役目であると、吉羽氏は口火を切る。
人に何かを教える手法には、大きく分けてティーチングとコーチングの2つがある。ティーチングとは、経験や知識の乏しい相手に対して一方通行で何かを教えること。コーチングとは、質問や傾聴など双方向的なコミュニケーションをとることで、相手に何かを気づいてもらうことである。アジャイルコーチは両方の手法を適切に使い分けながら、チームを成功に導いていく。
アジャイルコーチが担う職務領域は幅広い。組織づくりについての支援を行うこともあれば、プロダクトの課題設定の方法を取り扱うこともある。テスト駆動開発(Test-Driven Development:TDD)や継続的インテグレーション(Continuous Integration:CI)についてメンバーに教えるケースもある。チームの状況に合わせて、実施する内容を適切に変えていくのが、アジャイルコーチの役割なのだ。
アジャイルコーチに仕事を依頼する場合、私たちは何を意識すべきなのだろうか。
「大切なのは、仕事を依頼する側が『どのような成果を期待しているか』の期待値を適切に設定することです。期待値がないまま、外部の人を呼んでも効果が薄くなります。そして、優先順位の高い要件がいくつも存在するのは無理なので『アジャイルコーチを呼ぶことで、何を一番実現したいのか』を明確にすることが必要になります。期待値を明らかにすることで、どれくらいの頻度や期間で来てもらえばいいのかも見えてくるはずです」
多くの場合、「コーチングの期間が短すぎると成果は出ない」という。なぜなら、アジャイルコーチの助言を受けて、日々の業務を実施していくのは現場のメンバーであるため、同時にいくつもの施策を実施するのは不可能だからだ。チームの変化が目に見えるようになるまで、多くの場合は3か月ほどを要するという。
また、コーチに現場に来てもらう頻度としては「初期の頃は高頻度でコーチングやティーチングを実施した方がいいが、チームが成長してきたら少しずつ頻度を減らし、週あたり1日か2日のペースにしていく形でいい」と吉羽氏は語る。