はじめに
ユーザーに価値ある体験を届けるために、実名口コミサービス「Retty(レッティ)」では「プロダクトディスカバリー」に組織で取り組んでいます。プロダクトディスカバリーとは、顧客の課題を探究してソリューションを考え抜くことです。
私たちがプロダクトディスカバリーに力を入れることになったのは、飲食業界における変化が昨今ますます激しくなってきたことがきっかけです。
新型コロナウイルス感染症により、飲食店さんの状況は一変しました。度重なる緊急事態宣言、営業自粛、時短営業、感染症対策。感染状況が収まっているうちは客足が戻ってきているものの、まだまだ以前の状況には程遠く、厳しい状況です。さらに、最近では円安や世界情勢を起因とした原価高騰によるコスト増加問題もあります。飲食店さんの抱える課題の種類も深さも以前とは一変しています。
ユーザーサイドも同様です。テイクアウトやデリバリーも普及し、外食頻度や目的も数年前とは大きく変わってきています。またお店探しも多様化の傾向があり、グルメサイト以外のSNSや地図アプリも活用してお店を検索する人がますます増えています。
ユーザーさん・飲食店さん共に課題やニーズが目まぐるしく移り変わっていく状況だからこそ、腰を据えて顧客の課題に向き合わないといけないのではないか。仮説検証を絶えず回して、ソリューションを研ぎ澄ます必要があるのではないか。そんな経緯でプロダクトディスカバリーに注力するに至りました。
この記事では、プロダクトディスカバリーの定義について触れた上で、なぜ私たちが重要視しているのか、どんな状況下で効果を発揮するのかを紹介します。
PMのセンスに頼った開発に再現性はない
Rettyは2019年に大規模スクラム(LeSS)を導入しました。以来、複数のスクラムチームが1つのプロダクトバックログで開発する体制を取っています。2020年にはプロダクトマネージャー職種を導入。Rettyにおけるプロダクトマネージャー(以降、PMと略する)の定義を明確にし、スキル定義・評価システムを整えました。
当時の組織改革については、以前ProductZineさんにもご取材いただきました。
開発メンバー誰もが、プロダクトバックログアイテム(以降、PBIと略する)を起案し、優先順位を上げてユーザーにいち早くデリバリーするべきだとプロダクトオーナーに働きかけることができます。とはいえ、大多数のPBIはPMが起案し、優先順位を決めます。そのため、プロダクトマネージャーの起案するPBIの善し悪しでユーザーにデリバリーできる価値が左右されることになります。
では、PMのセンスによりプロダクトの価値は決まってしまうのでしょうか。たしかに一昔前はPMのセンスに頼った開発での成功例もあるかもしれませんが、外部環境の変化が激しく不確実性の高い現在において、それは否です。個人のセンスやアイデアに頼った開発では、顧客の課題にクリティカルヒットするプロダクトを生み出すことはできません。仮に一度成功しても再現性を持って二の矢、三の矢となるプロダクトや体験を提供することはできないでしょう。
何をいつデリバリーするかはPMのセンスではなく、ユーザーの課題から判断する必要があります。ユーザーの課題を探究してソリューションを考え抜くこと、つまり「プロダクトディスカバリー」に組織として取り組むことが重要なのではないか。これこそが、私たちがプロダクトディスカバリーに組織で取り組む理由です。この記事では、プロダクトディスカバリーについて定義した上で、その重要性とRetty開発チームがどのように組織として取り組んでいるかについて紹介します。