支援プロセスの全体像と伴走のスタイル
当社の営業支援は、「仕組みを設計して渡す」だけでは完結しません。実際に現場でその仕組みが機能し、成果につながるまでを伴走するスタイルをとっています。単なるアドバイスやマニュアル提供ではなく、「成果の再現性」が確立されるまでを支援の範囲としています。
プロセスの起点は、丁寧なヒアリングです。クライアントのビジネスモデルや顧客の意思決定構造、過去の営業実績、チームのスキルセットなどを多角的に把握し、その上で「どこに営業課題があるのか」「成果を阻んでいるボトルネックは何か」を仮説として設計します。多くの場合、課題は営業担当者個人のスキルではなく、プロセス設計や情報共有方法設計の不備にあります。
続いて行うのが、営業スクリプトやトーク構造の構築です。属人的な「うまい人のやり方」を解体し、誰でも同じ流れで話せるように構造化します。ヒアリングの順序や問いの深さ、提案のストーリーなどを設計し、「このとおりにやれば一定の確率で受注につながる」状態をつくります。
加えて、営業対象となる顧客の「優先度の見える化」も重要な要素です。企業規模、業種、役職、反応履歴、過去接点の有無などの属性・行動データを分析し、営業リソースをどこに集中すべきかを可視化します。このデータ設計により、担当者ごとの勘や感覚ではなく、根拠ある判断が可能になります。
設計されたプロセスは、単に渡して終わるのではなく、現場で使えるように教育パッケージとして整備します。具体的には、動画マニュアル、営業テンプレート、Q&A集、ケーススタディなどを提供し、チーム内での浸透をサポートします。そして実行フェーズに入った後も、営業ログや成約データをもとに定期的なフィードバックを行い、PDCAを回していきます。
当社が目指しているのは、KPIの達成だけではありません。最終的なゴールは、クライアント企業の「事業成長」です。アポ数や成約率といった一時的な成果ではなく、営業が組織に根づき、再現性あるかたちで回り続ける状態──それが、エッジコネクションの支援の成果指標です。
SaaS企業への支援事例と、プロダクトマネージャー的視点での気づき

とあるSaaSスタートアップの支援に入った際、プロダクトの完成度は高く、導入ユーザーからの評価も上々でしたが、なかなか新規顧客の獲得ペースが伸びず、事業の成長が頭打ちになっていました。よく話を聞いてみると、営業活動の大半をCEOとプロダクトマネージャーが担っており、明確なプロセスや役割分担がなく、「売れるのは創業メンバーだけ」という属人化の構造がボトルネックになっていたのです。
この状況に対して、当社ではまずプロダクトに到達するまでの顧客の前提状況の再設計から着手しました。具体的には、顧客が問い合わせに至るまでのインサイトや意思決定プロセスを洗い出し、それに合わせてセールスのフローとトークを再構築。また、導入を検討する企業が「何を理解すればスムーズに意思決定できるか」という視点で資料構成やFAQも再設計しました。
さらに重要だったのが、「営業担当者が何をすればいいか」が可視化された状態をつくることです。トップセールスだったCEOやプロダクトマネージャーの頭の中にしかなかった提案の順番や顧客対応の判断軸を、スクリプトやナレッジシートとして形式知化。特定の個人ではなく、チームで同じ動きができるようにしました。
こうした設計プロセスのなかで強く感じたのは、「営業以降の体験設計」もまたプロダクトマネージャーの守備範囲である、ということです。プロダクトが優れていても、それが「伝わらなければ」価値は届きません。営業活動は単なる手段ではなく、「ユーザー体験の入口」であり、ここでつまずけばプロダクトの価値自体が正しく評価されないリスクすらあります。
また、この企業では営業の仕組みが整ったことで、導入後のカスタマーサクセス領域にも良い影響がおよびました。営業時に取得した情報が整理されて社内で共有されるようになり、サクセスチームの対応品質が均一化し、解約率も改善。営業支援が単独で完結するのではなく、組織全体の連携設計へと波及していったのです。
プロダクト開発と同様に、営業もまた「構造」で動かすことができます。そしてその構造は、プロダクトマネージャーの視点やスキルセットによって設計可能です。むしろ、プロダクトマネージャーだからこそ設計できる営業の仕組みがある──それがエッジコネクションの現場で得た実感です。