はじめに──個の成果から、未来を担う存在へ
この章では、1人目プロダクトマネージャー(以下、PM)が「スケールのフェーズを終えた後、どこに向かうべきか」という問いに答えます。
これまでの回で語ってきたように、1人目PMに求められるのは「まず自分が成果を出し、再現性のある組織を作る」ことでした。そこまで到達したPMは、いよいよ「個の成果」から「組織・事業の未来を担う存在」へと進化する岐路に立ちます。
本稿では、その進化の方向性と乗り越えるべき葛藤、さらに連載の締めくくりとして皆さんにお伝えしたいメッセージをまとめます。
6.1 権限委譲が進み、組織がスケールした先にあるもの
スケールフェーズを超えた1人目PMが次に目指すべきなのは、「自分の仕事の延長」ではなく、「まったく異なる仕事」です。
再現性ある仕組みを整え、周囲に権限を委譲し、プロダクトが安定的に前進するチームができた──その先にあるのは、次のいずれか、または複数のキャリアオプションです。
- PMチームの統括(Director of Product Management)
- 経営直下での事業成長責任(VPoP/VPoEとの協働)
- プロダクト全体の長期戦略を描くCPOポジション
- 新規事業・新規プロダクトの創出と育成
- 事業開発や経営企画との橋渡し役としての事業責任者
いずれにも共通しているのは、視座をさらに上げ、抽象度の高い判断を担う必要があることです。もう、仕様の粒度を決めることが主な仕事ではありません。チームが決めた仕様が事業全体にどう貢献するか?という「意義と連動性を見抜く力」こそが問われます。
6.2 プロダクトの戦術から、事業全体を見通す視座へ

このフェーズでの最大の変化は、自分がプロダクトの意思決定を担う立場から、プロダクトを生み出す「構造」や「事業の伸びしろ」を見る立場に移ることです。
PM業とは、往々にしてプロダクト戦術──PRDを書く、UXを設計する、リリース日を詰める──に引っ張られがちです。しかし、スケール後のフェーズでは「PMチームとして成果を出す」ではなく、エンジニアやデザイナー、CS、BizDevを含むチームや、時にはその外側も巻き込みながら「事業を前に進める構造そのもの」を整える役割になります。
このとき意識したいのが、組織よりもまず「事業の成長」を優先するという視点です。もちろん、PMチームの拡充や教育も重要ですが、リーダーたるもの、よりインパクトの大きい場所に身を投じるべきです。
例えば、
- 新たな市場をどう開拓するか?
- PMFを過ぎたあとのステップチェンジを、どうもう一度立ち上げるか?
- プロダクト同士のシナジーをどう設計するか?
といった問いに向き合うべき時が、今なのです。