プロダクト開発速度を提供価値として進化する「データ活用」の可能性
そして、現在のエコシステムは、ユーザーデータアーカイブという「コア」を、プロダクト開発速度という「提供価値」に結びつけるまでの「ツール」と「ユースケース」について、さまざまな要素が生まれてきた。
ツールについては、メインの「ステートリプレイURL」をはじめ、「ドメインロジックのリプレイ技術」や「ユーザー状態の可視化技術」などが加わり、ユースケースについては、「可視化ツールでの挙動解析」「新人のオンボードツール」などが整ってきた。他にも、ユーザーのアクションシーケンス(正解、不正解など)に沿ってデータを入力し、期待値との比較を行う「シナリオテスト」や、マニュアルテストのデータをシナリオテストへ変換することで自動化をはかるなど、さまざまなユースケースが加わったという。また、スナップショットからユーザー状況を復元し、テストを行うといったユースケースも今後実装していく予定だという。
川原氏は「こうしたことが実現したことで、プロダクト開発速度は、挙動解析、バグ報告、自動テスト、ユーザー観察など、さまざまな領域で加速してきている。それに伴い、エコシステム全体もさまざまな領域で進化している」と語り、「進化の仕方が多様なので状況の変化に合わせた進化の仕方ができている。つまり、進化が単一なら、例えばデータ解析が不要となれば進化が止まる。しかし、テストや開発など、いろいろなものに必要となれば、そのニーズに従って多様な進化が予想される」とエコシステムの価値を述べた。
そして、エコシステム化することで、データの価値は至る所で活用され、結果としてデータ周りに対する投資にレバレッジが効くようになり、活用されるほど構造化・規格化が進み、活用のための基盤として進化していく。川原氏は「他のドメインロジックのインプットデータも同様に活用していけるはず」と語り、横展開についても示唆した。
そして、最後のまとめとして提供価値ごとのデータ活用戦略について比較表を提示。提供価値を「ユーザー課題解決」「データ分析・セキュリティなど」「プロダクト開発速度向上」と仮定して比較してみせた。そして、「プロダクト開発速度向上」を主な提供価値として、データの形式を構造化・高規格化し、ドメインロジックのインプットデータ・アーカイブを安価な大容量ストレージに格納することで、エコシステム構築が叶い、自律的進化が可能になることを強調した。
最後に、川原氏は「ドメインロジックのインプットデータアーカイブをコアに、『プロダクト開発速度』を提供価値としてエコシステムを構築すると、プロダクト開発速度もデータの組織的価値も爆上がりする」と総括し、「10年後のデータ活用の主流になるのではないか。ぜひ、トライしてみてほしい」と述べ、まとめの言葉とした。