さまざまな問題の解決には客観的で冷静な自己理解が有効
残る3つの課題は、「姿勢とマインドの問題」の領域だ。そのうちの一つ「4.防衛本能への迎合」は、他者に対する過剰な期待を持つこと、愚痴やねたみに同意すること、政治的な事柄を避けるための自己合理化、怒りとしての表出などが含まれる。これらの行動は、信頼を得られず影響力を発揮できない時に不満や失望につながり、前に進めなくなる自己損失を招く。従って、防衛本能に過剰に迎合するのではなく、メタ認知を通じて冷静かつ建設的に対応する必要がある。
続く「5.誠実さの欠如」は、敬意を欠く行動、聞く姿勢の不在、正論のみを突きつけること、間違いの訂正を怠ること、約束の不履行、率直さの不足、衝突回避、私欲の優先など、幅広い範囲で誠実さが欠けていると捉えられる。自己中心性や自意識過剰が他の要素を損なうことは普遍的な話であり、リーダーシップにおいて考慮しなければならない重要事項である。
最後が「6.意思と決意からの逃避」である。これは、意思決定やコミットメント、説明責任からの回避といった問題で、自己の信念に過剰に固執する傾向も含まれる。特に成果が出ない時にはコミットメントが重要であり、信念や目標が仕事とずれている場合、それに固執すると実際の目標達成が遠のく可能性がある。自分の信念ややりたいことを広い視野で捉えることが重要だ。
「姿勢とマインドの問題」が生じる要因について、横道氏は自身も経験したこととして4つ挙げた。1つが「乾き」である。自分が正当と思う評価を受けられないと、承認不足に陥り、それが負のサイクルを生むと思う。次が「人は変われない」という呪縛。昔からの考え方や、今更姿勢やマインドは変えられないという思いが、変化を妨げる。そして「大欲の不在」または「大義の欠如」。自己志向性やエゴが相対的に重要でなくなるような強い動機が重要となる。最後が「自己理解の低さ(メタ認知の低さ)」。問題を客観的に捉え、信じるべきものを見つけ出すためには、自己理解が不可欠である。
「姿勢とマインドの問題」を乗り越え、自己変革を遂げるためには、固定観念からの解放、自分に合った気づきの発見、失敗を学びの機会と捉えることが重要である。自身が不足している点を認めつつ他者に敬意を示すことで、多くの人から支援を得られる。継続的な自己理解とメタ認知の向上は、一貫したパーソナルブランディングやリーダーシップへとつながる。
さらに、人生の「大欲」を探求し続けることは強力な原動力であり、会社の目標に真摯に取り組む一方で、多様な人々から良い点を学ぶことが重要である。誠実さは、精神論だけでなく、「Radical Candor(徹底的な率直さ:相手に配慮することと、率直さを両立する考え方)」「アンガーマネジメント」「アクティブ・リスニング」「バイアスへの対処」などといったテクニックの積み重ねによって身につけられる。誠実さを身につけることで将来の可能性を広げることができる。
横道氏は最後に「個人の成長については、自己責任だけではなく、組織からも支援できるはずです。そのために外部のトレーニングやコーチングを活用することも有効な方法だと思います。私たちはコーチングを提供しており、興味がある方はぜひお問い合わせください」と呼びかけた。