6つのシーンで見るデータの活かし方
今回、松本氏が例に挙げたのは、SlackのようなBtoB向けのチャットツールを提供している企業である。チャットツールのプロダクトマネージャーであるあなたが、次の6つのシーンに遭遇したときをイメージしながら読み進めていただきたい。
シーン1:注力するプラットフォーム(例:ブラウザの優先度を決めるには?)
ブラウザ別にユーザーがどんな行動をとっているのかを見てみる。KPIの達成に寄与する行動を多くとっているユーザーがいるブラウザを優先すべきだろう。
シーン2:チュートリアルを離脱したユーザーは誰なのか?
アカウント作成から始まるチュートリアルを完了して、チャットを送るまでのファネルを用意していたとする。しかし、チュートリアルを完了せずに離脱してしまったユーザーがいた。Mixpanelの中では、その離脱したユーザーが誰なのかを特定できるため、カスタマーサクセスチームがフォローしてもいいだろう。あるいは、チュートリアルで離脱したユーザーを集めて、ユーザーインタビューをしてみるのもいいかもしれない。
シーン3:効果の高いマーケティングキャンペーンは?
アクセス解析でも「どのキャンペーンから入ってきたか」までは分かるが、プロダクト分析ツールを使うと、さらに「どのキャンペーンから入ってきたユーザーが、どのボタンを押してプロダクト内に入り、その後どんな行動を重ねてコンバージョンに至ったのか」まで細かく知ることができる。理想的なジャーニーをたどるユーザーが多いキャンペーンの投資を増やしたり、そのキャンペーンで使用していたメッセージを他のキャンペーンに転用したりすることで、ROIが高まるだろう。
シーン4:ボトルネックを探したい
プロダクトの改善に向けて、ユーザーの行動を阻害している「ボトルネックはどこなのか」を知りたいとき。特にBtoBの場合、本当のエンドユーザーに直接ユーザーインタビューを行うのは、なかなか難しいことが多い。実際にユーザーがアプリを開いた後、どんなパスを踏んでいるのか。そのパスは自分たちが想定するものと合致しているのか。合致していないのなら、どこで道を外れて迷い込んでいるのか。そうしたデータを分析して改善すれば、ユーザーの利便性を高めることができる。
シーン5:有償プランを契約してもらいたい
有償プランへの切り替えを促進したいなら、実際に有償プランを購入したユーザーがたどってきたパスをさかのぼってみるのが一番だ。顧客となったユーザーにインタビューをしても、きっとどんなパスをたどったのかまで、正確に思い出してもらうのは困難だからである。プロダクト分析ツールを使えば、ユーザーの無意識で行ったことまで正しく可視化できる。
シーン6:機能追加をした結果の、ユーザーへのインパクトを測る
例えば新しく「メンバーを招待する」機能を追加したとしよう。売上増加が果たしてマーケティングでなく本当にその機能の影響だったのか、立証するのは難しい。そんなときは「インパクトレポート」というMixpanelの機能を使えば、新機能追加によるインパクトの有無や大きさを確認することができる。
「時間をかけて機能追加してもらったものを『これは失敗だったね』とは言いづらいと思うが、客観的なデータを介在することで、プロダクトマネージャーとしての会話がしやすくなると思う。成功したならもう一度繰り返せばいいし、失敗したならやめればいい。『実際のユーザー行動』と『自分たちが届けたいユーザー価値』をうまく連携しながら可視化することで、プロダクト開発が進めやすくなる」(松本氏)