競争力を高める工夫:量
アスエネでは、領収書などのAI読み取りで温室効果ガス(GHG)の排出量を算定する特許や、製品ごとの二酸化炭素排出量算定の特許といった「強みである独自技術を模倣から守る」観点であったり、幅広い知財ポートフォリオ(特許の種類による網羅性)を築く多量展開であったりで、「脱炭素・ESG経営は、全方位的にアスエネは強い」といった資産をアピールができています。競合優位性の一つに「アスエネは知財がある」と他社から言ってもらえる状態になっています。
では、競合優位性を築く知財は、どのような工夫からうまれるのでしょうか。
知財の細かい観点や防御/攻めという部分は、専門の記事に譲ります。今回は、プロダクトマネージャーの観点や事業運営として、私たちが注力している取り組みを量の最大化の観点で2つ、質向上の観点で1つ紹介します。
量の最大化として、1つめに「プロセスの型化」があります。KPIとして目標を明示し、社内SNSなどでの公表や状況の可視化を行います。そして、定常的な特許起案の会を設けており、検討サイクルを型化しています。
現在は2か月に1度の企画・開発部門を横断した起案大会でインセンティブを設けた形で実施し、非常に活発な状況を生めています。この際には「評価項目を明示し、獲得ポイントや起案した特許のランキング」をつけるような形で評価プロセスを透明化しています。この開示されたプロセスやフィードバックになるポイントをもって「何を改善すればいいか」が分かる仕組みをつくり、個々の起案の量が最大化されています。
2点目は、長期的に継続できる組織を作るための「自発を促すコミュニケーション」です。特許にもあてはまるような、査定・通過という一定の基準を持った取り組みは「特許として正しい」レベルが求められます。そのため、特許出願経験のあるメンバーが指導する場面は多々発生します。ただし、指導者が起案者の自信を失わせるような形で指摘してしまうと、起案者は成功体験を感じられないだけでなく、自発性が失われてしまいます。アイデアがいくらあってもメンバー自身が起案をしてくれない限り、知財のすくいあげはうまくいきません。
逆に、最も優れた指導者であれば、そこに集うメンバーが「この会社の今の良好な状態は、自分たちが作ったのだ」といえるような組織を作ると思います。製品開発の案件議論の場や、顧客ヒアリングの場などで「今の機能は、こういう特許性もあるのでは?」という問いかけや対話により、観点の幅が広がるとともに、起案メンバーの自発性をうながすことが重要です。自発性の好循環がうまれることで、組織全体の好循環につながり、知財という競争力が高まります。
メンバーが自走できるコミュニケーションをマネージャー・知財担当者は常に意識し、対話的実践を行っています。知財や特許のようなイノベーションは、現場の工夫の総量が結果最大化になるものであり、決してトップダウンで広がるものではありません。