プロダクトマネージャーに求められる、現場主義と実直さ
吉澤氏にプロダクトマネージャーへのアドバイスを求めると、改めて自らが1次情報をとりにいく現場主義の重要性を強調した。エンジニア時代にサービスが停止した際、自らサーバーに入り原因を調査した経験をふりかえり、「何が起きているのかは、やはり現場にいないと本当のことはわからないものです」と語る。
この姿勢は、顧客理解にもつながっている。「プロダクトをつくる以上、社内だけでなく、お客さまのことも理解していなければなりません。そのためには、日々臆することなく現場に足を運び、そこで働く人たちと会話し、対話する姿勢が必要です」と述べる。
とくに自分の専門外の領域では、客観的かつ多角的な視点が求められる。「たとえばマーケティングなど、自分が得意ではない分野にも積極的に関わるようにしています。その際は、知らないことが多いという前提で、さまざまな意見を客観的に捉えることが大切です」と説明する。このように専門や立場の異なるメンバーと協力しながら1つの目標に向かって進める姿勢は、ヌーラボが提唱する「チームワークマネジメント」の考え方にも通じている。
そして、この「チームワークマネジメント」の実践を支えているのが「素直さ」だ。「知らないことは素直に知らないと言える正直さを大事にしています。知ったかぶりをすると、周囲にはすぐに見抜かれてしまい、信頼関係にも悪影響が出ます」と話す。

また、リーダーシップにおいては「聞きすぎ」と「独断」の両極端を避ける難しさも実感しているという。「意見ばかりを取り入れていると、リーダーシップがないと思われがちですし、逆に独断的すぎると、人の話を聞かない人と見られてしまう。自分がどこで判断し、どこで聞くべきかを理解するバランスが大切です」と述べる。
吉澤氏は、自らのこのマインドセットも一朝一夕で身についたわけではないと率直に語る。「正直なところ、この考え方がすぐにできたわけではありません。多角的に物事を捉えることや、知らないことを素直に認める姿勢というのは、自分にとっても難しいものでした」と振り返る。
そのうえで、「自分が成長できたのは、本当にさまざまな良き先輩方や、社外の尊敬する方々──先生と呼びたくなるような存在との出会いがあったからです」と話す。彼らとの対話を通じて、「知ったかぶりをしない」「素直であることが信頼につながる」という価値観を体感的に学んできたという。
「結局のところ、そういった人間性の部分も、プロダクトマネージャーにとっては重要なのではないかと思います」と語る吉澤氏の言葉には、スキルだけでなく人としての成長を重視する姿勢がうかがえた。