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経営に進むプロダクトマネージャーが持つべき3つの視点──視座・スケール・ファイナンス

 プロダクトマネージャーという職種が市場に定着し、VPoPやCPOといった経営層を目指す道筋も明確になりつつある一方で、現場のプロダクトマネージャーと経営との間には、「容易には越えられない谷」があります。特にプレーヤーとして成果を上げている人ほど、その先に進む際に苦戦しがちです。本稿では、株式会社estieの執行役員で事業責任者を務める久保拓也氏が、自身の経験も交えながら、注意すべき3つの落とし穴と、具体的な回避手段について詳しく解説します。(編集部)

はじめに:プロダクトマネージャーとプロダクト担当役員の間に横たわる谷

 プロダクトマネージャーという職種が市場に定着し、そのキャリアは多様に広がりました。中でも、順当にキャリアアップをしていくのであれば、プロダクトマネージャーからグループプロダクトマネージャー、Director of Productを経て、VPoP(Vice President of Product)やCPO(Chief Product Officer)などの経営層を目指すという道筋も明確になりつつあります。

 しかし、どの職種にもあるように、現場のプロダクトマネージャーと経営(VPoPやCPO)の間には容易には越えられない谷があります。特に、プレーヤーとして成果を上げている人ほど、その先に進む際に苦戦する「落とし穴」が存在します。ここでは、私自身の経験も交えながら、プロダクトマネージャーが経営レイヤーを目指す際に注意すべき3つの落とし穴について整理します。

1.経営を目指すプロダクトマネージャーが陥りがちな「3つの落とし穴」

落とし穴1:「プロダクト単位の視野」に縛られてしまう

 プロダクトマネージャーの主な役割は、担当するプロダクトを成功させることです。プロダクトビジョンを描き、プロダクト価値を表現する指標を定め、ユーザーインタビューを通じてユーザーニーズを把握し、ロードマップを策定し、具体的なプロダクト開発を推進します。プロダクトのもたらす世界観はもちろん、具体的かつ細かな改善までが含まれます。

 しかし、経営層であるVPoPやCPOに求められる視点は、単一プロダクトではなく、複数プロダクトの相互関係や企業全体のプロダクトポートフォリオの最適化です。プロダクト間のリソース配分や戦略的連携を考える「ポートフォリオマネジメント」は、プロダクトマネージャーの役割の延長線上にあるように見えますが、実際には「投資判断」の領域に踏み込み、経営資源を戦略的に動かす経験が不可欠です。私自身、スタートアップの社長室や事業責任者として会社全体のリソースマネジメントを担った経験がありますが、このような経験は通常のプロダクトマネージャー業務の中だけでは得にくいものとなります。

落とし穴2:「意思決定スケールのギャップ」を超えられない

 プロダクトマネージャーの意思決定は通常、数か月〜1年という比較的短期的なサイクルが中心です。具体的には、プロダクト改善や機能追加など、迅速に成果を出すための決定が求められます。

 一方、経営層に求められる意思決定は、3年〜5年、場合によってはそれ以上先を見据えた長期的かつ企業の将来を左右するものになります。市場への参入・撤退、M&A、新規事業創造といった重大な経営判断は、不確実性が高くリスクも大きいため、トップダウンな意思決定になりがちです。

 やや精神性に近いものになってしまいますが、それを支える強い「意思決定の胆力」や、困難な状況から回復する「レジリエンス性」が求められます。私も現在、取締役たちと「M&Aを前提としたプロダクト戦略の検討」や「超長期からのバックキャストでの新規事業創造」などを行っていますが、その重圧や複雑性はプロダクトマネージャー時代とはまったく異なります。

落とし穴3:「ファイナンス視点の欠如」がコンテクストのずれを生む

 多くのプロダクトマネージャーはプロダクト指標やユーザー満足度といった視点で成果を評価されます。しかし経営層になると、ROI(投資収益率)、利益率、キャッシュフローといった財務指標の管理や最適化が不可欠となります。このファイナンス視点が欠けると、投資家や経営層の持つコンテクストとのずれが生じ、適切なプロダクト投資や長期的な企業成長を妨げます。

 私自身、前職で資金調達を経験し、投資家向けのピッチ資料の作成やエクイティストーリーの構築をしたことで、初めてプロダクトを財務視点で見る重要性に気づきました。こうした視点を身につけないまま経営層を目指してしまうと、重要な意思決定場面で大きな障害となります。

 以上の3つの落とし穴は、プロダクトマネージャーとしての成功体験だけでは超えることが難しく、明確な意識改革とスキルの拡張が必要になります。次節では、これらの落とし穴を具体的に回避するための実践的方法について解説します。

次のページ
2.「落とし穴」を回避するためにプロダクトマネージャーがすべき「3つの経験」

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この記事の著者

久保 拓也(株式会社estie)(クボ タクヤ)

株式会社estie 執行役員 VPoP 兼 マーケットリサーチ事業本部 事業責任者 早稲田大学卒業後、博展に新卒入社。2013年にリクルートに転職し、HR領域でGM、拠点長などを経験。その後、ユアマイスターに参画、資金調達や中期戦略立案を推進し、プロダクト及び事業責任者として従事。2022年8...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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