AIは「新入社員」。コンテキストを与えてこそ戦力になる
説明会の冒頭、オルソン氏は現在の市場環境について「SaaSの時代から、AI+SaaSの時代へと移行している」と表現した。しかし、それはAIが既存のソフトウェアを完全に置き換えることを意味しない。「AIはあくまで、私たちが築き上げてきたテクノロジーに追加して活用するものであり、拡張するものだ」とオルソン氏は語る。
その上で、AI活用の鍵となるのが「コンテキスト(文脈)」だ。オルソン氏はAIを「新入社員」に例えてこう説明する。
「もし、入社したての若手社員に一切の背景情報を与えず、データも渡さずに仕事をさせたらどうなるか。それなりの成果しか出ないでしょう。AIも同じです。AIの質を決定づけるのは、どれだけ良質なコンテキストとデータを与えられるかにあります」
Pendo(ペンド)はこれまで、あらゆるソフトウェアの「利用データ」や「ユーザーの感情(NPSなど)」を蓄積してきた。この膨大なコンテキストをAIに与えることで、プロダクトマネージャーの意思決定を強力に支援しようというのが、今回のアップデートの核心だ。
「分析」はAIエージェントの仕事になる──新機能「Agent Mode」
今回発表された目玉機能が「Agent Mode(エージェントモード)」だ。これは、プロダクトマネージャーが日常的に行っているデータ抽出や分析業務を、AIとのチャット(対話)だけで完結させる機能である。
従来、プロダクトマネージャーが「特定の機能を使っているユーザーにインタビューしたい」と考えた場合、SQLを記述してデータを抽出したり、CSVをエクスポートしてリストを作成したりといった「作業」に多くの時間を奪われていた。
Agent Modeを使えば、自然言語で「ダッシュボード機能を使っているユーザーは誰?」と問いかけるだけで済む。デモンストレーションでは、「フォーキャスト(予測)機能についてフィードバックをくれた管理者」という条件を対話形式で指定し、該当する105名のユーザーを一瞬で特定する様子が披露された。
さらに、特定したユーザーへのインタビュー依頼メールの作成や、カレンダー調整までもAIが代行する。オルソン氏は、「これまで3週間かかっていたディスカバリー(探索)プロセスが数分で終わる」と胸を張る。
これにより、プロダクトマネージャーは「ツールを操作する時間」から解放され、「ユーザーと対話し、真の課題を特定する」という本来の業務に集中できるようになる。
「AI機能」のROIをどう測るか──「Agent Analytics」
もう一つの大きな発表が「Agent Analytics」だ。これは、企業が自社プロダクトに組み込んだAIエージェント(チャットボットなど)の利用状況を分析する機能である。
昨今、多くのSaaSがAI機能を搭載し始めているが、「ユーザーがAIとどのような会話をしているのか」「AIの回答によってユーザーの課題は解決したのか」を正確に把握できている企業は多くない。
Agent Analyticsでは、AIエージェントとの対話ログはもちろん、「AIが答えられなかった質問(Could generally answer)」や「ユーザーが不満を感じたポイント(フラストレーション)」を可視化できる。
オルソン氏は、「これからのインターフェースは、クリックやスワイプといった従来の操作(GUI)と、プロンプトによる会話(CUI)が共存する『ハイブリッド』な世界になる」と予測する。このハイブリッドな体験全体を可視化・分析できるプラットフォームこそが、これからのプロダクトマネージャーには不可欠になるというわけだ。
