約20年のリサーチャー経験から学んだことを届けたい
本題の前に、私自身の自己紹介をさせてください。大手通信会社のリサーチ部門に8年勤務した後、2013年にマーケティングリサーチ&コンサルティングの会社「ユニークルーパー」を設立。IT業界のみならず、不動産、運輸、医薬など、さまざまな業種のリサーチプロジェクトを、クライアントのプロダクトマネージャ―さんや事業責任者の方々と向き合いながらご支援してきました。デスクリサーチ、アンケート、インタビューといった主要リサーチ手法は、課題の整理から意思決定まで、もちろん実調査を含めて一気通貫でできることを強みとしています。これまでの経験から習得した「ユーザーリサーチのコツ」を一人でも多くの人に、分かりやすくお届けしたいと思っています。
探索型リサーチと検証型リサーチの違い
ユーザーリサーチには、大きく分けると「探索型リサーチ」と「検証型リサーチ」があります。探索型リサーチというのは、文字通り、ユーザーニーズやビジネスの機会を深く探るようなアプローチのことで、主に仮説を構築するために実施します。一方の検証型リサーチは、定義した仮説を検証するアプローチのことで、仮説に対して実態がどうであるか、どのくらい乖離があるかを図る調査や、施策などの効果を測定するリサーチも検証型に含まれます。
プロジェクトの段階やリサーチの目的によって、どちらのアプローチを取るべきかが変わります。また、探索と検証は表裏であり、どちらか片方だけを集中して実施するというよりも、探索と検証を繰り返すことによって、課題に対する理解の解像度が高まっていきます。例えば、はじめは仮説検証型のアプローチでリサーチをしていても、想定外の状況や意見が出てきて、仮説を構築しなおすことがあります。その場合は、検証型から探索型に切り替える必要があるのです。
どちらのアプローチを取るべきかについては、調査手法や開発フェーズと必ずしも一致はしませんが、プロダクト開発のフェーズで整理すると、おおむね以下のようになります。
仮説の探索によく利用されるのは、インタビュー調査やエスノグラフィーと呼ばれる行動観察調査であり、仮説の検証によく利用されるのは、アンケート調査や会場調査(CLT)・ホームユーステスト(HUT)と呼ばれる評価調査などがあります。
リサーチの難易度でいえば、やはり検証型よりも探索型の方が難しく、探索型のリサーチで効果を出すにはある程度のスキルや経験が必要になるでしょう。最初のうちは、研修や教本などでの学習だけでなく、インタビューや行動観察に慣れた人に付いて実践的に習得することをお勧めします。独学でやらざるを得ない場合は、最初から完璧を求めずに1つでも学びが得られればよい、くらいの気持ちで焦らずにやってください。場数を踏んでいくうちに、自然とコツを習得できるようになると思います。