競争力を高める工夫:質
最後に、質の向上の観点で1点ご紹介します。知財の専門的な施策とは異なる点で、特に当社が相対する気候変動領域というテーマ性を含めての観点となります。それは「事業戦略の言語化と浸透」です。
この気候変動に関わるクライメートテックは、近年の地球温暖化を発端に、水資源、廃棄物問題、大気汚染と環境データ管理全般に関わります。これは、欧州を中心としたルールメイクの流れが全世界に広がりつつあり、日進月歩で法規制や情報開示ルールが新たな定義、拡張がなされています。その領域にあって、情報鮮度が非常に重要であり、その情報が組織全体に伝達しているかが非常に重要な観点です。
作るべきプロダクトの方向性や今後の拡張性が、プロダクト企画の観点とずれていたり、法規制や市場ニーズとずれていたりしてはプロダクトマーケットフィット(PMF)を満たせません。それを適切に成し遂げるには、組織全体を通した知識の流通、解像度の向上が求められます。そのため、適切に、事業戦略を伝達することが重要であり、事業戦略の言語化と浸透はおざなりにしてはいけない大切な要素となります。事業戦略の徹底的な理解があるからこそ市場分析と知財戦略の融合がなされ、顧客の声を反映することや拡張性の方向性を理解した適切な設計につながります。
また、その設計や仕様検討の過程でうまれる工夫こそが、知財として貴重な兆しにつながります。一人ひとりが息をするように事業のことを考える文化をうむことは一朝一夕でできるものではありません。事業推進者やリーダーの言語化を、定常的に共有や対話することで徹底し、メンバー全員からフィードバックをもらうことで戦略伝達や解像度を高めています。この高い解像度こそが、知財としての事業戦略と知財の融合を生み出し、質の向上につながっています。
おわりに
気候変動という新しい領域で、創業6年目の当社が、積極的な知財活動を推進してきた背景を振り返り、知財と開発戦略の融合における工夫を紹介しました。当社は、プロセスの型化、自発的なコミュニケーション、事業戦略の言語化と浸透で、量・質をあげる工夫を行ってきました。これらの取り組みは、現場の視点や意識が変わる動きになり、組織全体の能力が上がり、知財と開発戦略の醸成につながっています。ぜひ、プロダクト戦略の一つに知財活動を取り入れてみてはいかがでしょうか。