SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第4回。オフラインとしては2回目の開催です。

ProductZine Day 2025

ProductZine Day 2025

チームの力を最大限に引き出す「チームワークマネジメント」By ヌーラボ

なぜプロジェクトは炎上するのか──BacklogのPMが語る「火種対策」の要諦

チームの力を最大限に引き出す「チームワークマネジメント」By ヌーラボ 第5回

着火前の準備こそが火種マネジメントの本質

 吉澤氏は「火種マネジメント」を、問題が表面化してからの対処ではなく、事前の準備と捉えている。「特に開発においては、気づいたときにはもう遅いというのが私の経験上の実感」と述べ、トラブルの兆しを見逃さない体制づくりの重要性を強調する。実際、「プロジェクトがうまくいかない理由の8~9割は立ち上げ段階にある」との認識のもと、初期段階での準備と設計に重きを置く姿勢を示している。

 この準備段階で重要となるのが、ステークホルダーとの関係構築である。吉澤氏は「プロジェクトに関わるステークホルダーの方々とは、日頃から関係性を築いておくことで、必要な事前情報を引き出しやすくなる」と説明する。

 具体的には、リモートワークが中心の同社でも、オフィスに出社した際には主要メンバーと軽い雑談を交わすなど、積極的にコミュニケーションを取るよう心がけている。「お互いがどのような悩みを抱えているのか、自分のチームでは何が課題となっているのか」といった率直なやり取りを通じて、公式な共有では見えにくい本音や課題の兆候を把握しようとしている。

 チーム運営の中心は、フルリモート環境におけるオンラインでのやり取りである。チャットを主な手段としつつ、朝会や定例ミーティングで情報や課題を共有している。複数のチームを見ている吉澤氏は、社員に公開されたチーム内のやり取りにも目を通し、「このチームでは何かうまくいっていないのではないか」といった兆しを日々確認しているという。

 そしてもう一つ重要なのが、「1次情報」を重視する姿勢である。「問題が生じている当事者とは必ず直接話すようにしています。また、何かしらの事象が起きている場合には、関連するデータがあれば必ず自分で確認する。人づての情報に頼らず、自分自身の目で確かめることを徹底しています」と語る。

 ヌーラボ社内では、多くのチームが自律的に火種を察知し、対処する能力を備えているという。吉澤氏は「リーダーやリーダー候補の方々は、特に火種に対して敏感です」と語り、こうした傾向が組織全体の火種マネジメント力を支えていると指摘する。

 この自律性の背景には、アジャイル開発のプラクティスがある。スクラムを採用している開発チームでは、「チームで物事を解決していく」という考え方のもと、PDCAサイクルを毎週回している。毎朝の朝会の後に1週間の計画を立て、実行後には週次のレトロスペクティブ(ふりかえり)を実施。「そのプロセスにおける課題はもちろん、どうすればもっと良いやり方があったのか、どこに問題があったのかをチーム内でしっかりと挙げて議論しています」と説明し、継続的な改善が日常的に行われていることがうかがえる。

 こうした組織文化の土台は、2009年に吉澤氏が入社する以前から形成されていたという。社長の橋本正徳氏は、早期にアジャイル開発に取り組み、執筆活動もしていた人物だ。吉澤氏は「入社当時にはすでにアジリティを持った組織ができあがっており、後から人が加わっても、その流れはずっと継続しています」と語る。

次のページ
対話・可視化・目的意識──「火種」を未然に防ぐプロジェクト設計

この記事は参考になりましたか?

チームの力を最大限に引き出す「チームワークマネジメント」By ヌーラボ連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

ProductZine(プロダクトジン)
https://productzine.jp/article/detail/3520 2025/07/03 11:00

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング