「データ」×「アジャイル」で日本企業の内製化を支援
後半では、Pendo.io Japanの花尾氏が登壇し、日本市場独自の戦略について語った。
花尾氏は、日本企業の間で「内製化」が進む一方で、「アジャイル文化の定着」や「データドリブンな改善サイクルの確立」に苦戦する企業が多いと指摘する。ツールを導入しても、それを使いこなして開発プロセスを変革できる人材やノウハウが不足しているのだ。
そこでPendoジャパンが打ち出したのが、2つの「伴走型」支援策だ。
1つ目は、9月にローンチしたコンサルティングサービス「Pendo道場」。これは単なるツール講習ではない。Pendoのコンサルタントが顧客企業のプロダクト開発チームに伴走し、KPI設定から仮説検証、改善アクションの実行までを支援するプログラムだ。花尾氏は「答えを提示するのではなく、お客さま自身で意思決定できるようになることをゴールにする」と語る。
2つ目が、今回発表されたBekind Labs(ビーカインド・ラボ)との戦略的パートナーシップだ。
Bekind Labsは、アジャイル開発の先駆的存在として知られるPivotal Labs(現在はVMware Tanzu Labsなどへ継承)出身のメンバーを中心に設立されたコンサルティングファームだ。花尾氏自身もPivotal Japanの出身であり、その縁もあって実現した提携だという。
この提携により、Pendoが提供する「ユーザー行動データ(=客観的な事実)」と、Bekind Labsが持つ「アジャイル開発の実践知(=現場の変革力)」を掛け合わせ、日本企業のプロダクト開発を変革していく狙いだ。
「体験」こそが差を生む最大の要素に
花尾氏は、直近2年間でPendoジャパンの人員が350%に拡大し、金融・流通・製造・通信の全重点領域でエンタープライズ顧客を獲得したことを報告した。JALやKDDI、三井住友海上といった大企業での導入が進んでいることは、日本企業においても「UX(ユーザー体験)」が経営課題になりつつある証左と言える。
「技術がコモディティ化する中で、これからは『体験』こそが競合他社との差を生む最大の要素になる」と花尾氏は締めくくった。
AIによって「分析」という作業のコストが劇的に下がる今、プロダクトマネージャーの真価は「どのデータをどう読み解き、どんな体験を創るか」という創造的な領域でこそ問われることになるだろう。
オルソン氏の著書『プロダクト・レッド・オーガニゼーション』で提唱された「プロダクト主導」の思想は、AIという強力な武器を得て、新たなフェーズへ突入しようとしている。これからのプロダクトマネージャーには、テクノロジーを使いこなし、より本質的な価値創造に向き合う姿勢が求められそうだ。
