2.4 いきなりプロダクトを触るな──まずは“自ら”の立ち位置を確立せよ
1人目PMがよく陥る罠があります。それは、「成果を出さなきゃ」と焦り、すぐに機能を考え、仕様を練ったり、ロードマップを作り始めてしまったりすることです。しかし、信頼されていないPMが描いた戦略は、誰にも響きません。
まずは、自分自身を“チームの中に存在させる”ことから始めましょう。現場を観察し、質問を重ね、小さな課題を一つずつ拾っていく。Slackで反応し、雑談に混ざり、ランチに誘う──そのすべてが立ち上がりの一歩です。あなたの言葉が浸透するためには、まずは「この人は信頼できる」という土壌が必要です。

2.5 1人目PMの日常業務──都市の運営を始めよう
チームの中に自分という存在が根づいてきたら、いよいよ「プロダクトの長」としての本分に着手するフェーズです。ここから始まるのは、戦略を現実に落とし込む“都市の運営”という仕事です。
都市とはプロダクトであり、あなたはその市長として、日々多岐にわたる意思決定と調整を担うことになります。具体的には、次のような業務が日常になります。
現有予算の見直し
どのプロジェクトにどれだけのリソースを割くべきか、限られた予算の中で優先順位をつける力が問われます。
組織体制の調整
開発フローや意思決定のあいまいさが見つかれば、柔軟に仕組みを設計し直す必要があります。ルールのない都市では、誰も安心して働けません。
優先順位の管理
短期的な施策と中長期のビジョンを両立させるロードマップの策定は、まさに“都市の未来設計図”を描く作業です。
進行中プロジェクトの遂行
決めたことが進んでいるかをモニタリングし、詰まりがあれば手を動かし、関係者をつなぎながら進行を支援します。
これらはどれも、チームの信頼なしには機能しない仕事です。だからこそ、2.4節で述べた「まずは自分自身の立ち位置を確立する」フェーズを経てから、今回の業務に移ることに意味があります。
そして忘れてはならないのは、これらの業務をただ「こなす」のではなく、“事業の成長につながる選択かどうか”という軸を持って取り組むことです。
1人目PMの仕事は、ただプロダクトを動かすことではなく、プロダクトを通じて事業を前に進めること。その意識が、日々の細かな判断にまでにじみ出るようになったとき、あなたは本当の意味で「都市を運営している」と言えるのです。
まとめ:「プロダクトを動かす前に、“自分自身”を動かせ」
1人目PMにとって、プロダクトを動かす前にやるべきことがあります。それは、自分自身を“チームの中に存在させる”ことです。信頼を得る前に描いた戦略は誰の心にも届かず、チームも動かせません。
今回は、そんな1人目PMの立ち上がり方について、以下の5つのステップで整理しました。
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2.1 社長をトレースせよ
- 理念や思考の背景まで深く理解し、憑依レベルで“社長の言葉”を語れるようになる。
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2.2 自分の中に「都市」を持て
- プロダクトを抽象的な構造としてではなく、責任を持って運営する“都市”として捉える。
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2.3 言語化せよ──ビジョンと戦略を“見える化”する
- 何のためにプロダクトを作るのかを明文化し、チームが迷わず動ける“道しるべ”をつくる。
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2.4 いきなりプロダクトを触るな──まずは“自ら”の立ち位置を確立せよ
- 焦って成果を出すのではなく、信頼の土壌を育て、自分がチームの一員として根づく。
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2.5 1人目PMの日常業務──都市の運営を始めよう
- 信頼を得たら、戦略と実務の往復をこなしながら、“プロダクトという都市”の責任者として運営を担う。
次回は、いよいよプロダクトの戦略設計に入ります。
“業界の未来”と“会社の現在地”という2つの座標軸を起点に、どのようにプロダクト戦略を描くのかについて具体的に掘り下げていきます。