SmartHRのプロダクトマネージャーの仕事とは
──松栄さんの考えるタレントマネジメントの定義と、「SmartHRタレントマネジメント」のプロダクトの価値を教えてください。
タレントマネジメントとは、「従業員に時間やお金を投資して、企業の業績を伸ばすこと」であり、企業の成長を支える手段の一つであると考えています。具体的な投資の形としては、従業員のエンゲージメントや成長角度をあげるために1on1を実施したり、適切な評価をするために人事制度を設けたり、チームビルディングや育成のために外部講師を招いてワークショップを開いたりするなど、さまざまな施策が考えられます。が、それらを“なんとなく”やるのではなく、一つひとつの取り組みに目的を持ち、ロジカルに積み上げていくことが大切です。
例えば、1・3・5年後にプロダクトを何個増やそうと決めたら、何人のプロダクトマネージャーが必要だという人員計画ができます。そうすると、1年後にチーフが2人必要になるのに対し、チーフをできる人が今1人しかいないといった差分が見えてくるので、足りない1人を育成するのか、採用するのかを検討することになります。仮に育成するのであれば、従業員の中から候補者を挙げて、現状不足している要素を補強していかなければなりません。
このように事業戦略に合わせて施策を立案・実行することがタレントマネジメントであり、そのために必要な従業員個々人の情報を活用できる状態にしておくことが、タレントマネジメントツールというプロダクトの価値となります。
──SmartHRのプロダクトマネジメント組織の体制について教えてください。
SmartHRは職能別組織を採用しているので、CPO(チーフプロダクトオフィサー)の下にPMのダイレクターが3名(労務・タレントマネジメント・プロダクト基盤、各1名)、さらにその下にマネージャー、チーフ、メンバーがいます。ドメインエキスパートも含めると、プロダクトマネジメント組織全体で27名が所属しています。
──PMのダイレクターには、どのような裁量権があるのですか。
とても裁量権があります。プロダクト数が多いですし、深いドメイン知識も必要とされます。「このプロダクトにこんな新機能をつくりたい」というときに、CPOの承認を得なければ機能開発できないということはありません。壁打ちはいつでもしてくれて良いフィードバックはもらえますが、新規プロダクトを作るときや大きな人事異動が必要な場合以外はほとんどダイレクターに委ねられていると思います。だから速いスピードで動けるんです。
──27名で約20プロダクトあるということは、だいたい1人で1プロダクトを担当しているのですか?
タレントマネジメント領域では、そうですね。1人のPMが1プロダクトを担当していて、1つの開発チームを持っているようなイメージです。
──プロダクトマネージャーの職務範囲は企業によってさまざまですが、SmartHRの場合を教えてください。
先ほどお伝えしたプロダクトビジョンの策定やロードマップの作成以外でいうと、OKRの設定などです。顧客理解に必要な商談の同席やユーザーヒアリングなどは、PMMと一緒にしています。開発については、SmartHRではとても忠実にスクラム開発を実践していて、開発チームが自律的に動いているので、PMが管理するようなことはありません。一方、スクラムのPOはPMが担当しています。
このように分業が進んでいるので、「SmartHRのプロダクトマネージャーって、担当領域が狭いんですか?」と聞かれることもあるのですが、それは大きな誤解です。何でも屋さんになってしまうと、すべてが中途半端になってしまいます。価値の高い良いプロダクトをつくるためには、プロダクトマネージャーが本当にやるべき本質的な仕事に時間を割けること、集中することが重要だと考えています。
──UXリサーチも専門の方がいるのですか?
UXライターはいますが、UXリサーチャーはいません。「PMが自ら一次情報を取りに行くことで、高い顧客解像度を持ちながら、何をつくるかを決めるべきである」という価値観があるからです。リサーチ技術はPMが個々で磨いています。
──教科書に載っているような王道のプロダクトマネージャーなんですね。
そうですね。SmartHRはプロダクトマネージャーの本質的な仕事を極められる、理想的な環境だと思います。